2022 Fiscal Year Research-status Report
体性感覚認知における脳内酸素濃度変動及びその制御機構の生理的意義
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21K15208
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
中尾 章人 京都大学, 工学研究科, 助教 (30748926)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 低酸素 / イオンチャネル / 酸素センシング |
Outline of Annual Research Achievements |
酸素は好気性生物の生存に必須である。諸器官の中でも、特に酸素消費量が高い脳においては細胞の置かれる酸素環境が重要となる。また、虚血などの病的な低酸素状態以外の生理的な酸素濃度変動の生物学的意義は、脳高次機能の文脈において特に未解明である。本研究では、脳高次機能に伴う脳内酸素濃度変動及びその制御機構の生理的意義の追究を行う。本年度は脳内酸素濃度制御機構の脳高次機能に与える影響を検討するため、低酸素感受性チャネルTRPA1の脳内発現分布の詳細を検討した。TRPチャネルを含むチャネルタンパク質は疎水性領域が比較的多い膜タンパク質であり、免疫組織染色が一般的に難しいことが知られているため、まずは脳部位によってそれぞれ染色条件の最適化を行うことで実験系を確立し、並行して遺伝子改変マウスによる評価も遂行した。さらにバイオインフォマティクス的アプローチも取り入れた。これらの評価により、従来の報告とは異なる興味深いTRPA1の発現パターンが明らかとなりつつある。 低酸素研究で問題となるのが酸素濃度の時空間的な制御である。狙った場所に、望んだタイミングで低酸素環境を作り出す酸素スカベンジャーの開発に着手し、光によって酸素の消費を制御できる新たな試薬を開発した。このように光によって酸素を消費できるような試薬は前例がないため、低酸素研究における強力なツールとして期待される。 また、脳内酸素濃度変動の制御機構の生理的意義の探索のための、脳内の酸素センサータンパク質TRPA1を欠損したマウスの繁殖は順調に進んでいる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は光により時空間的に低酸素環境を制御可能な光酸素スカベンジャーの開発に成功し、また低酸素感受性チャネルTRPA1の脳内発現分布の詳細が明らかになりつつある。したがって、脳高次機能に伴う脳内酸素濃度変動及びその制御機構の生理的意義が明らかにするための準備がおおむね順調に進んでいると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
組織深部のイメージングを見据えた二光子励起顕微鏡とリン光寿命測定装置を組み合わせた実験系の確立と共に、脳の各領域から単離したアストロサイトの細胞内酸素濃度分布を評価予定である。また、脳高次機能に伴う脳内酸素濃度変動及びその制御機構の生理的意義の追究のため、脳内の酸素センサータンパク質TRPA1を欠損したマウスの行動学的及び電気生理学解析を行う予定である。
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Causes of Carryover |
組織深部のイメージングを見据えた二光子励起顕微鏡とリン光寿命測定装置を組み合わせた実験系の確立のための予算を計上していたが、その他の脳高次機能に伴う脳内酸素濃度変動及びその制御機構の生理的意義の研究が予想外に進展しそちらに注力したため、差額が生じた。次年度以降に計画全体の予定通り使用予定である。
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