2021 Fiscal Year Research-status Report
強力なπ電子供与性を示す新たな中性置換基の創成と新規有機蛍光色素開発への展開
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21K15222
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
藤田 光 金沢大学, 薬学系, 助教 (40782850)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 電子供与基 / π電子密度制御 / 蛍光色素 |
Outline of Annual Research Achievements |
π電子供与基の共鳴効果に基づく共役系のπ電子密度の向上は、有機化学の根幹をなす重要な概念の一つであり、π系分子の物理的性質、化学反応性、光学特性の制御において重要な役割を担っている。蛍光イメージングに汎用されている優れた蛍光色素のうち、push-pull型のπ系を母体構造とするものでは、多くの場合、吸収・蛍光の増強や長波長化を目的としてπ電子供与基が導入されている。ジアルキルアミノ基は代表的なπ電子供与基として知られており、様々な蛍光イメージング用蛍光色素分子において利用されているものの、そのπ電子供与能には上限が存在するため、蛍光色素のπ電子密度制御に制約を与えていることが課題となっている。ジアルキルアミノ基より強力なπ電子供与性を示すものとしては、アニオン性のオキシド基が知られているものの、対イオン交換による性質変動や構造的多様性の低さに問題を抱えている。そこで本研究課題では、電気的に中性でありながら、ジアルキルアミノ基やオキシド基より強力なπ電子供与性を示す新たなπ電子供与基を創成することで従来型置換基の問題点を克服し、さらに本中性π電子供与基を利用した新規有機蛍光色の開発へ展開させることを目的として研究を実施する。 今年度には、本中性π電子供与基を効率的に構築するための手法について、(1)分子間反応法及び(2)分子内反応法の2通りの合成戦略を採用し、検討を行った。さらに、比較的単純な構造をもつ複数の蛍光色素骨格を選択し、これらに対する本中性π電子供与基の導入検討を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
概要の項で述べた本中性π電子供与基を効率的に構築するための手法について、(1)分子間反応法及び(2)分子内反応法のいずれの合成戦略も有効であることが明らかとなった。これらの手法は互いに相補的に用いることが可能である。すなわち、(1)の分子間反応法は、本中性π電子供与基にかかる構造的多様性をもたらしやすいという利点がある一方で、導入可能なπ電子系に一定の構造的条件を要するという制約がある。反対に、(2)分子内反応法では、本中性π電子供与基の構造変換に制限をもつ一方、幅広いπ電子系に導入することができる。本検討により得られた研究成果は、論文投稿の準備段階にある。さらに本検討により得られた結果の一部を利用し、有機合成上有用なオニウム化合物の実用的合成法を見出したため、国際学会及び論文にて報告した。 確立した効率的合成法を利用して、複数の蛍光色素骨格に本中性π電子供与基を導入することにも成功した。これらの新規蛍光色素に関して光物理学的性質の初期評価を行った結果、いずれの蛍光色素骨格においても、本中性π電子供与基の導入が効果的な吸収波長の長波長化をもたらすことが分かった。 以上のとおり、当初の研究目的に沿った成果が得られているため、本研究は順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究は順調に進展しているため、当初の計画については大きな変更をすることなく、今後も予定通りに推進する。今年度合成に成功した新規蛍光色素に関しては、その光物理学的及び化学的性質の詳細な評価を実施する。さらに、広いπ系を有するより複雑な構造の蛍光色素骨格に対しても本中性π電子供与基を導入し、その光物理学的及び化学的性質について評価を行う。さらに以上の研究成果を論文にまとめ、学会および学術雑誌上で報告を行う。
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Research Products
(2 results)