2021 Fiscal Year Research-status Report
プリオン遺伝子変異が原因の稀少神経難病に対するiPS細胞を用いた創薬研究
Project/Area Number |
21K15231
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Research Institution | Jichi Medical University |
Principal Investigator |
松薗 構佑 自治医科大学, 医学部, 講師 (80809070)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 創薬 / ドラッグリポジショニング / 神経難病 / 遺伝学 / 稀少疾患 / iPS細胞 / フリーラジカル |
Outline of Annual Research Achievements |
プリオン遺伝子変異PRNPのY162変異により進行性の視神経萎縮と視野障害が起きることを新たに発見し、論文で報告、発表を行った。プリオン遺伝子変異で視力障害が起こることはこれまでに既報告があったが、視神経萎縮が進行性に起こるということは世界的に前例が無く、今後プリオン関連疾患で同様の病態が起こるのか、起こるとすればどのような機序が関連しているのか、考察する上で貴重な発見である。 また、本研究の主旨であるY162変異により起こる稀少神経難病PSDDの患者からのiPS細胞を樹立することに成功した。本iPS細胞から神経細胞に分化させる系をモデルに、PSDDの病態をin vitroで再現することにも成功した。同PSDD患者由来のiPS細胞モデルから、PSDDの発症及び病態進展には酸化ストレスが多いに関与していることが分かった。そこで、フリーラジカルスカベンジャーの一種である既存薬Xが、PSDDの病態進展抑制に期待されたが、実際にiPS細胞の系で病態進行を抑制していた。 既存薬Xは他疾患に対して、既に多くの患者に投与されている薬物だが、同意と承認手続きを得た上で現実のPSDD患者に投与を行っている。投与を実際行っている中で特に副作用などの出現なく、安全に投与を継続しているが、今後実臨床における効果について評価を行う。評価方法は、1) 体重の推移、2) 末梢神経の機能 (神経伝導検査の結果)、3) 尿閉に伴う腎機能の推移、4) 平均的な嘔吐の回数、5) MIBG心筋シンチによって行っている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
世界に先駆けて、プリオン遺伝子変異により進行性の視神経萎縮が起こるを発見し、報告することが出来た。 また、当初の予定よりも早くY162変異により起こる稀少神経難病PSDDの患者から複数クローンのiPS細胞を樹立し、疾患モデルを構築することにも成功した。既に実際の患者に対して、細胞モデルの結果を参考に、有効性を期待して既存薬Xを臨床投与している段階であり、予定よりも順調に研究を遂行できている。 今後は同iPS細胞を応用して、進行性の視神経萎縮が起こる病態の解明にも繋げたり、より効果の著しい神経保護薬の創薬や同定に繋がる可能性があり、本研究は当初の計画以上に進展していると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
先ず、本研究では既にY162変異による稀少神経難病PSDDの患者に既存薬Xを実際に投与している段階であることから、既存薬Xが実際のPSDD患者の病態進行を抑制したかどうかについて評価、検討を行う。 次に、本研究で樹立に成功したiPS細胞の系は、酸化ストレスの神経系 in vitroモデルであることから、今後次世代型の神経保護薬の創薬に応用可能な可能性がある。2022年現在脳神経保護薬で臨床可能な薬は世界的に限られており、実際に次世代型の神経保護薬の創薬に成功した場合には、脳卒中やてんかん、ALSなどの他神経疾患にも適応拡大させることが期待できる。
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Causes of Carryover |
6,917円の次年度使用額が生じた。コロナ禍のために海外学会に参加することが出来なかったためと考えられる。次年度の助成金と合わせて、本研究の遂行と研究結果の報告のために使用する。
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