2021 Fiscal Year Research-status Report
Exploration of adjuvant-active substances derived from extracellular membrane vesicles
Project/Area Number |
21K15254
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
河野 健一 京都大学, 薬学研究科, 助教 (70732874)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 細胞外小胞 / 腸内細菌 / アジュバント / 免疫細胞 / 蛍光イメージング |
Outline of Annual Research Achievements |
菌体から恒常的に分泌される細胞外小胞(EV)は、菌体側の生存競争における働きに着目した報告は数多くあるが、宿主側に対するEVの生物学的意義は長らく不明とされてきた。近年の研究で、EVには宿主側の免疫細胞を活性化させる効果があると分かってきた。しかしながら、宿主細胞のEV取込み機構や、EVの内包物放出機構、そして免疫活性中心の物質情報に関して、分子レベルでの解析データは極めて限られている。仮説として「宿主細胞はEVを積極的に取込む事により、EV内包物、特に核酸分子を免疫増強剤として利用しているのではないか」と考えた。本研究では、宿主に対するEVの作用機序を詳細に解明し、EV由来の免疫増強因子をアジュバントへ応用する事を研究目的とする。 研究1年目に該当する本年では、EVの回収と細胞内取込み評価を行った。モデル細菌としてEVの分泌量が大腸菌の9倍程度多い、アジの腸内に生息するグラム陰性細菌Shewanella vesiculosa HM13を選択した。HM13株から分泌されるEVを超遠心分離で単離精製し、粒子追跡装置で確認を行ったところ、粒径は直径55 nm (中央値)で、粒子数は1 mLあたり1.6E+12個の分泌量である事が分かった。膜染色剤であるFM4-64でEVを20分間染色した後、 限外濾過により遊離の色素を検出限界以下まで希釈した。野生株(WT)と糖鎖欠損株(ΔWax)由来のEVを準備して、ヒトすい臓癌由来細胞株(PANC-1)とヒト胎児腎細胞(HEK293)に対して細胞内取込みを評価したところ、どちらの細胞株でも糖鎖欠損株(ΔWax)由来EVの方がWT由来のEVよりも細胞膜集積性および細胞内取込み効率が高い事が分かった。EV表層の糖鎖が細胞内取込みに重要な関わりが示唆された。また、EVは100 uMでも細胞毒性が無い事が明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1年目では、様々な菌株からEVを回収して、その細胞内取込みを評価する事を研究目標に据えていた。液体培地からEVを単離精製する手法を確立するのに時間を要した為、当初候補に挙げていた菌株全てを評価できなかったが、糖鎖の有無によって細胞膜集積性と細胞内取込み効率に違いがある事を発見した。細菌由来のEV表層に提示される糖鎖が細胞内取込みを促進すると考えていたが、糖鎖欠損体由来のEVの方がWT由来のEVよりも細胞膜集積性と細胞内取込み効率で共に優れている事が分かった。1つ目の仮説として、一般的に負電荷に富む糖鎖で覆われたEVは静電的反発で、負電荷脂質を膜表面にわずかに含む哺乳類細胞には取り込まれにくいという事に起因すると考えられる。2つ目の仮説として、腸内細菌由来のEVと哺乳類細胞の間で分子認識機構が既に構築されているが、糖鎖の存在によって標的認識分子が覆い隠された結果、糖鎖を表面に提示するWT由来のEVで細胞膜集積性と細胞内取込みが低かったと考えられる。哺乳類細胞側の受容体を介した能動的な取込みである事を示唆する可能性があり、次年度の研究おいて重要な足掛かりとなる研究結果が得られた。
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Strategy for Future Research Activity |
研究2年目に該当する次年度では、研究1年目で目標に掲げた残りの菌株由来のEVの選別を引き続き行い、HM13株由来のEV性能の普遍性を確認する為に同様の実験を行う。また、EVの免疫細胞の活性化能を評価する為に、マクロファージを用いて炎症性サイトカインの一種であるインターロイキン6やTNFαなどの産生量に与える変化を評価する。次年度では分子レベルでのEVの免疫作用機序の解明を行う。免疫細胞膜上でEVの集積度合いを定量化する為に、膜受容体候補となるToll-like受容体にタグを遺伝子導入してプローブで蛍光標識し、膜上でのEVと受容体の挙動を一分子計測法で具に解析する。次に、細胞内でEV内包物の放出を追跡する為に、EV膜と核酸分子をそれぞれ膜染色剤と核酸染色剤で染色し、内包タンパク質は蛍光タンパク質の遺伝子導入で標識する。蛍光相関分光法(FCS)は内包物の運動性を測定する事で、EVからの内包物放出のタイミングを明らかにする。また、FCSを用いる事で内包物の細胞内濃度を算出できる為、放出量の定量化も可能となる。内包物毎の放出量と炎症反応の強さを結びつける事によって作用機序全容の解明に大きく貢献する。さらに、共焦点顕微鏡観察を用いた3次元イメージングで細胞内での内包物の分布変化を時空間的に追跡する。
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