2022 Fiscal Year Research-status Report
Exploration of adjuvant-active substances derived from extracellular membrane vesicles
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21K15254
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
河野 健一 京都大学, 薬学研究科, 助教 (70732874)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 細胞外小胞 / 曲率認識ペプチド / 超遠心分離法 |
Outline of Annual Research Achievements |
様々な細胞から恒常的に分泌される細胞外小胞(EV)の生物学的意義は長らく不明とされてきた。近年の研究で、EVには免疫細胞を活性化させる効果があると分かってきたが、細胞のEV取込み機構やEVの内包物放出機構、そして免疫活性中心の物質情報に関して、分子レベルでの解析データは極めて限られている。本研究では、EVによる細胞の免疫活性化機序を解明し、EV由来の免疫増強因子をアジュバントへ応用する事を研究目的とする。 研究2年目に該当する本年では、EVの効率的な回収法の開発を行った。EVの細胞内取込みを観察・測定するには大量のEVサンプルが必要でありEV回収段階が研究の律速となっていた。これまでに汎用されている超遠心分離法を用いて、3種類の細胞株で試験したところ、10 mLの細胞培養液上清から回収されたEVの平均粒子数はおよそ3.0E+8 (n = 3-4独立試験)であった。回収量が少なく、5時間程度の作業時間を要するため、回収方法の改善が必要だと考えた。そこで、EVに特異的に結合する曲率認識ペプチドを用いた新たなEV回収法を独自に開発した。曲率認識ペプチドをアガロース樹脂に固定化し、10 mLの細胞培養液上清からEVの回収を試みたところ、回収されたEVの平均粒子数はおよそ1.2E+9(n = 5独立試験)であり、超遠心分離法と比べて回収量が4倍に改善された。また、作業時間は超遠心分離法の1/3 (1.6時間)にまで短縮することができた。粒径分布は曲率認識ペプチドで回収したEVの超遠心法よりも小さいことが分かった。EVの純度を調べるためにマーカータンパク質であるCD63を標的としたウェスタンブロットを行ったところ、曲率認識ペプチドで回収したEVの方が超遠心分離法より濃いバンドが見られたことから、既存手法よりも高純度のEVが得られていることが分かった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2年目では、EVの高効率回収を目指して、曲率認識ペプチドを用いた新たなEV回収法の独自開発に取り組んだ。EVは高度に湾曲した膜構造を有しており、その膜表面は負に帯電している。これまでの研究で開発した曲率認識ペプチドは特異的に高曲率膜を認識する性質があり、夾雑環境下でもEVに結合する。本研究では曲率認識ペプチドに改変を加え、pH依存的に正味の電荷が反転する電荷反転型ペプチドの設計を試みた。弱酸性条件下ではペプチドの正味の電荷が正電荷となることで静電的相互作用によりEV結合性が増大し、反対に弱塩基性条件下では負電荷となることで静電反発によりEV結合性が低減するような設計を施した。電荷反転型ペプチドを樹脂上に固定し、pH応答的にEVをキャッチ&リリースすることで、夾雑物を含む培地からEVの単離を目指した。EV研究で報告例のあるヒト子宮頚部癌細胞株(HeLa)やヒトすい臓癌由来細胞株(PANC-1)、ヒト間葉系幹細胞株(MSC-R37)に由来するEVを10 mLの細胞培養液上清から回収を試みたところ、3種類の細胞株から回収されたEV粒子数はどれも平均値でおよそ1.2E+9 (n = 5独立試験)であることが分かった。この手法では超遠心分離法と比べてEV回収量が4倍に改善されており、作業時間の面でも超遠心分離法の1/3 (1.6時間)にまで短縮することができた。粒径分布を確認したところ、平均粒径は直径120-130 nmであり超遠心分離法の結果(平均直径140-150 nm)よりも小さいEVを回収できていることが分かった。CD63をマーカータンパク質としたウェスタンブロット試験では、曲率認識ペプチドで回収したEVの方が超遠心分離法よりも高純度のEVが得られていることが分かった。次年度の研究おいて重要な足掛かりとなる研究結果が得られた。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度に該当する3年目では、曲率認識ペプチドで単離したEVの免疫細胞の活性化能を評価する為に、マクロファージを用いて炎症性サイトカインの一種であるインターロイキン6やTNFαなどの産生量に与える変化を評価する。炎症反応を誘導したEVを選別し、分子レベルでのEVの免疫作用機序の解明を行う。免疫細胞膜上でEVの集積度合いを定量化する為に、膜受容体候補となるToll-like受容体にタグを遺伝子導入してプローブで蛍光標識し、膜上でのEVと受容体の挙動を一分子計測法で具に解析する。次に、細胞内でEV内包物の放出を追跡する為に、EV膜と核酸分子をそれぞれ膜染色剤と核酸染色剤で染色し、内包タンパク質は蛍光タンパク質の遺伝子導入で標識する。蛍光相関分光法(FCS)は内包物の運動性を測定する事で、EVからの内包物放出のタイミングを明らかにする。また、FCSを用いる事で内包物の細胞内濃度を算出できる為、放出量の定量化も可能となる。内包物毎の放出量と炎症反応の強さを結びつける事によって作用機序全容の解明に大きく貢献する。さらに、共焦点顕微鏡観察を用いた3次元イメージングで細胞内での内包物の分布変化を時空間的に追跡する。これらの解析結果を統合してEV中に含まれるアジュバント活性物質の特定を目指す。
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Research Products
(3 results)