2021 Fiscal Year Research-status Report
Elucidated a molecular mechanism of hypoestrogenism via BDNF towards radical treatment
Project/Area Number |
21K15257
|
Research Institution | Takasaki University of Health and Welfare |
Principal Investigator |
三反崎 聖 高崎健康福祉大学, 薬学部, 講師 (10453424)
|
Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
|
Keywords | エストロゲン / BDNF / 卵巣摘出 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、エストロゲン低下症の根本的治療に向け、エストロゲンによるBDNF制御に関する新しい分子機構を解明することを目的とし、卵巣摘出マウスを用いて脳の視床下部および骨格筋におけるBDNFの関与について、自発運動量への影響を中心に検討する。 高齢化が進む日本では今後、40代頃から現れる更年期症状(うつ症状、骨粗鬆症)に加えて、糖尿病などの生活習慣病の罹患率の増加が懸念される。さらに老年期では自発的な気力も低下するが、いずれの症状もエストロゲンの低下が大きな影響を与えている(本研究ではこのようなエストロゲン低下に関連した有害事象をエストロゲン低下症と呼ぶ)。したがって、エストロゲン低下が生体機能に与える影響およびその分子機構を解明することは、健康寿命延伸や更年期症状に有効な治療戦略構築に結びつくことが期待される。 脳由来神経栄養因子(BDNF : Brain-derived neurotrophic factor)は、記憶や学習に代表される高次脳機能発現において根幹的な役割を果たす神経栄養因子の1つであるが、エストロゲンと同様に末梢においても多彩かつ重要な作用をもっている。また、血中および唾液中のBDNF量はエストロゲン量と相関し女性の生殖機能の状態を反映している。このことから、卵巣摘出マウスの脳・筋組織における卵巣摘出後の自発運動量の変化や脳内BDNFをはじめとした因子の変化を明らかにする目的で、卵巣摘出術後より定期的に自発運動量や脳内遺伝子の変化を観察した。その結果、予想よりも早い時期から卵巣摘出群で自発運動量の低下が観察され、エストロゲンの補充により自発運動量の減少は改善した。また、視床や筋肉でBDNF発現の変化が観察された。この結果より、エストロゲンの低下は、筋肉組織や視床においてBDNFシグナルの変化をもたらし、自発運動量の減少を引き起こすことが示唆された。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
令和3年度の研究では、卵巣摘出後の自発運動量の変化や脳内BDNFをはじめとした因子の変化を明らかにする目的で、卵巣摘出術後より定期的に自発運動量や脳内遺伝子の変化を観察した。その結果、手術1週間後より卵巣摘出群で自発運動量の低下が観察され、エストロゲンの補充により自発運動量が改善した。線条体ではBDNF発現の変化は観察されなかった。線条体では、ドパミンなどのBDNF以外の因子とエストロゲンとの関与について検討する必要があると考えられる。視床においては、BDNFタンパク質発現にも変化が観察された。令和4年度の研究では、予定通り筋肉および視床のエストロゲン、BDNFシグナル解析を行うとともに、骨格筋初代培養細胞を用いたBDNF活性化スクリーニング法の確立へ向けた研究を進める。
|
Strategy for Future Research Activity |
今後は、以下の計画で研究を実施する。 卵巣摘出マウスの脳内において、BDNF発現の変化が観察されたため、BDNF発現におけるエストロゲンの関与を明らかにするためにBDNFシグナルの解析研究を遂行する。 さらに、新たな研究手法として骨格筋初代培養細胞を用いたBDNF活性化薬のスクリーニング法の確立を目指す。卵巣摘出群および偽手術群から骨格筋初代培養細胞を作製し、BDNF発現に変化があるか検討する。骨格筋でのエストロゲンによるBDNF発現の低下が観察された場合、骨格筋初代培養細胞を用いてBDNF活性化薬の探索を行う。
|
Causes of Carryover |
本研究計画では、令和3年度の予算は、BDNF-lucマウスのイメージングによるBDNF発現の経時的な変化を観察する予定であったが、脳内BDNFの可視化においては脳の部位による詳細な結果を得にくいことから、野生型マウスを用いて経時的に脳内BDNF発現の変化を観察した。そのため、BDNF-lucマウスのイメージングによる解析に比較し、時間はかかったが脳の各部位においてmRNAおよびタンパク質発現の変化に関して詳細なデータを得ることができた。また、BDNF-lucマウスのイメージングのための消耗品費はかからなかったため、予定よりも助成金の使用額は少なかった。 令和4年度においては、エストロゲンのBDNFシグナルへの関与を明らかにするため、BDNFシグナルに関係する各種抗体の購入、初代培養細胞を作製、検討するための各種試薬、加えて、研究の進捗状況によっては薬物ライブラリーを用いたBDNF活性化薬のスクリーニングの検討をしているため、令和3年度および4年度の使用額を合わせた助成金の使用が必要となる。
|