2021 Fiscal Year Research-status Report
亜鉛の吸収・動態制御に着目した加齢性疾患の予防法の確立
Project/Area Number |
21K15262
|
Research Institution | Kyoto Pharmaceutical University |
Principal Investigator |
西藤 有希奈 京都薬科大学, 薬学部, ポスドク (20867709)
|
Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
|
Keywords | 亜鉛 / 老化 / 亜鉛輸送体 / 金属動態 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、加齢による亜鉛の吸収・動態の破綻機構の解明を目的とし研究を進めている。本年度は、亜鉛の吸収や排出過程に寄与する亜鉛輸送体の発現と体内亜鉛動態の相関性に焦点を当て、消化管を介した亜鉛吸収・動態制御機構の全容解明を目的とし以下の解析を行った。 1)培養細胞系での解析 亜鉛の取り込みに関わる輸送体ZIP4と排出に関わる輸送体ZNT1の発現の相関性および亜鉛動態との関連性をウエスタンブロット法および誘導結合プラズマ質量分析法 (ICP-MS)を用いて解析した。その結果、ZIP4の発現を誘導すると細胞内の亜鉛量が増加し、これに伴いZNT1の発現が上昇することも明らかにした。以上の解析により、消化管における亜鉛の取り込み、排出、動態制御の分子メカニズムを細胞レベルで統合的に理解できるデータを蓄積させることができた。 2)消化管からの亜鉛吸収機構を個体レベルで評価する C57/BL6マウスを通常食、亜鉛欠乏食、亜鉛を与えた群に分類し、輸送体の発現変化と体内亜鉛動態の相関性を比較解析した。特に、亜鉛を血中へと運ぶ亜鉛輸送体ZNT1に関しては、細胞レベルで亜鉛状態に応じて発現が鋭敏に変化することを明らかにしてきたが、個体レベルでの応答は不明であったため、詳細な解析を進めた。解析の結果、個体レベルにおいてもZNT1の発現が亜鉛状態に応じて鋭敏に変化することを明らかにした。更に、ICP-MSを用いた解析により、輸送体の発現変化と体内亜鉛動態に相関性を認めた。今後は、亜鉛吸収過程における亜鉛輸送体の発現応答と亜鉛動態の関連性について引き続き詳細な解析を進めるとともに、この吸収過程を老齢マウスと比較解析し、加齢に伴い亜鉛吸収機構が破綻するメカニズムについて解明することを目標とする。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本年度の解析では、亜鉛の吸収に寄与する亜鉛輸送体の発現と体内亜鉛動態の相関性について解析し、消化管における亜鉛の取り込み、排出、動態制御の分子メカニズムを統合的に理解するための基礎的知見を得ることができた。一方で、老齢によって、この機序がどの様に破綻するかについて明らかにすることは今後の課題となるため、全体としてはやや遅れている状況にあると判断している。
|
Strategy for Future Research Activity |
(1)消化管における亜鉛吸収過程について引き続きより詳細に解析する。具体的には、亜鉛の吸収をより効率的に行うために必要な亜鉛シャペロンタンパク質などを同定することを計画している。 (2)老齢マウスにおいて、見出した輸送体および関連タンパク質の発現と亜鉛動態の相関性を若齢マウスと比較評価し、加齢に伴う亜鉛吸収・動態制御の破綻機構を明らかとする。さらに、亜鉛欠乏に起因する疾患の発症との関連性についても評価する。 (3)見出した制御機構を標的とした亜鉛吸収効率促進因子をin vitroでスクリーニングし、加齢性疾患疾患に対する予防・改善効果をin vivoで検証する。
|
Causes of Carryover |
当該年度においては、加齢に伴う亜鉛欠乏症の発症メカニズムの解明のため、まずは消化管吸収の全容を理解することを目標に研究を進めた。その過程で、輸送体の発現を解析するための抗体の特異性について詳細な解析を行ったため、当初の計画よりも研究が遅れ、次年度使用額が生じた。翌年度分として請求した助成金と合わせて、次年度は、本年度得た情報を元に以下の解析を計画している。 (1)消化管における亜鉛吸収過程について引き続きより詳細に解析する。具体的には、亜鉛の吸収をより効率的に行うために必要な亜鉛シャペロンタンパク質などを同定することを計画している。 (2)老齢マウスにおいて、見出した輸送体および関連タンパク質の発現と亜鉛動態の相関性を若齢マウスと比較評価し、加齢に伴う亜鉛吸収・動態制御の破綻機構を明らかとする。さらに、亜鉛欠乏に起因する疾患の発症との関連性についても評価する。 (3)見出した制御機構を標的とした亜鉛吸収効率促進因子をin vitroでスクリーニングし、加齢性疾患疾患に対する予防・改善効果をin vivoで検証する。
|
Research Products
(5 results)