2023 Fiscal Year Annual Research Report
インフルエンザウイルス関連細菌性肺炎で見られる細胞膜突起構造の機能と制御策の追究
Project/Area Number |
21K15265
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Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
野依 修 長崎大学, 高度感染症研究センター, 助教 (30737151)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | インフルエンザウイルス / ナノチューブ / 黄色ブドウ球菌 / 細胞間伝播 |
Outline of Annual Research Achievements |
インフルエンザ患者が細菌に共感染した場合、肺炎の重症化が見られ、高い致死性を示す。その原因の一つとして、治療薬の効果減弱が挙げられるが、そのメカニズムについては不明な点が多い。インフルエンザウイルスに感染した肺胞基底上皮腺癌細胞A549では、オセルタミビル(ウイルス細胞外放出阻害薬)やインフルエンザウイルス中和抗体が存在する状況下においても、ナノチューブと呼ばれる細胞膜突起構造が形成され、その内部をウイルスが通過することで近接細胞へ感染が広がることが分かっている。そこで本課題では、インフルエンザウイルスと黄色ブドウ球菌の共感染時に、新たに形成されるナノチューブが、治療薬の存在下において、ウイルス粒子の細胞間移動にどの様に関わっているのか、さらにその制御策について検討した。 オセルタミビル存在下において、インフルエンザウイルス単独感染細胞と比較して、インフルエンザウイルスと黄色ブドウ球菌に共感染した細胞において、より多くのナノチューブが形成され、その構造体表面あるいは内部をHA、NP、NS1等のウイルスタンパク質が通過していることが分かった。さらにアクチンの重合阻害剤であるサイトカラシンD存在下では、ナノチューブの形成は強力に抑制され、インフルエンザウイルス感染細胞から非感染細胞へのNP移行効率は顕著に減少した。以上の事から、インフルエンザウイルスは黄色ブドウ球菌と共感染することでアクチンを主要な構成要素とするナノチューブの形成を増強し、オセルタミビル存在下では効率的な細胞間伝播経路として利用している可能性が示唆された。
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