2021 Fiscal Year Research-status Report
ヒトコホートを用いたビタミンBの摂取が腸内細菌群集に与える影響の解明
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21K15267
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Research Institution | National Institutes of Biomedical Innovation, Health and Nutrition |
Principal Investigator |
朴 鐘旭 国立研究開発法人医薬基盤・健康・栄養研究所, 医薬基盤研究所 AI健康・医薬研究センター, 特任研究員 (60803335)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 腸内細菌 / 栄養素 / ビタミン / バイオインフォマティクス |
Outline of Annual Research Achievements |
食事による栄養摂取は腸内環境に最も影響を与えると知られており、従来の研究では主に腸内細菌の主要なエサである食物繊維が注目されている。しかし、実際には、食物繊維だけではなく、多様な物質が大腸まで到達できることから、申請者は食物繊維以外の他の栄養素により新たな腸活のスタンスを解明できるのではないかと考えた。申請者が解析を行った研究グループの研究成果から、腸内細菌に影響する食事、栄養素を網羅的に探索したところ、微量栄養素が大きく関連していることが確認された。特に、腸内免疫の制御にも、腸内細菌の代謝にも重要であるビタミンB1の摂取の影響について注目した。そこで、申請者は研究グループの協力のもと、ビタミンB1欠乏エサで飼育したマウスを用いて、ビタミンB1の欠乏が腸内細菌叢に影響することを明らかにした。このことから、本研究では、ビタミンB1の摂取と腸内細菌との関連についてヒトコホートデータを用いて解明し、そのメカニズムを明らかにすることを目的として行った。対象者の選別については、申請者の研究グループがすでに確立し運営している観察研究の参加者を対象とした。選別のため、腸内細菌叢に影響する環境因子について網羅的に確認したところ、地域による影響が最も高いことが判明し、研究対象は一つの地域のデータで行う必要があると判断した。また、各地域コホートデータの栄養素摂取の変動を確認し、研究対象コホートを選別した。研究対象の腸内細菌叢のシーケンシングデータについて、検討した結果、追加のシーケンシング解析は不要と判断し、腸内細菌叢とビタミンB1との関連について解析した。解析の結果から、ビタミンB1の摂取は特定の細菌の生存に影響していること、短鎖脂肪酸の産生にも影響することが確認された。さらに、in silicoパスウェイ解析によるメカニズムの解明ができた。これらの内容については、論文投稿中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
今年度の目標であったヒトコホートデータのシーケンシング解析・短鎖脂肪酸測定、情報解析については、十分に達成することができた。 申請者はヒトコホートデータ対象者の選別のため、多様なコホートデータを用いて、検討を行った。選別の基準として腸内細菌叢に影響していると知られている抗生剤使用、特定疾病の有無だけではなく、考慮する必要のある環境因子について検討したところ、地域が腸内細菌叢に大きく影響することが確認され、同じ地域で設定する必要があると判断した。ビタミンB1を含む微量栄養素の変動が大きい地域コホートを各地域コホート間の比較解析によって選別できた。選別した地域コホートについて、すでにシーケンシング解析が完了し、データクオリティも十分であることを確認した。短鎖脂肪酸測定については、一部のデータで解析済みであったため、現在のデータをもとに解析を行った。腸内細菌叢解析については、シーケンシング解析によって得られたFASTQファイルは、Qiimeパイプラインをもとに作成された自動化スクリプトを用いて処理した。各データの処理・統合・統計解析はRを用いて行った。解析の結果、ヒトのデータにおいても、一部の腸内細菌がビタミンB1の摂取によって影響されることが確認できた。また、短鎖脂肪酸の産生にも腸内に存在する特定の物質とともに影響することが示唆された。ビタミンB1の摂取に影響される細菌については、KEGGを用いたin silicoパスウェイ解析によって、特定酵素の欠損によって、代謝に必要にもかかわらず、自ら産生できないことを明らかにした。これらの内容については、論文投稿中である。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、得られた成果について、学会などで発信する予定である。また、ビタミンB1の摂取量、糞便中の短鎖脂肪酸の量、腸内細菌叢データを中心に、様々なメタデータを用いて、Random Forestなどの機械学習モデルを作成し、各データの関連について、より明確にしていく。さらに、健康診断データなどを活用することで、我々の健康との関連について、より詳細に解明し、新たに得られる知見について、学会発表・論文投稿を行う。
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Causes of Carryover |
当初予定していたシーケンシング解析および短鎖脂肪酸測定について、対象データの選別を行った結果、解析済みのデータを用いて解析を行うこととなり、未使用額が生じた。また、新型コロナの影響により、予定していた学会に参加できず、参加費・旅費等に未使用額が生じた。そのため、次年度に行う予定である機械学習などの解析のため使用するサーバーのメンテナンス費用や論文投稿費、学会の参加費・旅費に充てることとしたい。
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