2021 Fiscal Year Research-status Report
細胞種レベルの解像度で迫る、胎児性アルコールスペクトラム障害の発症メカニズム
Project/Area Number |
21K15275
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
沖川 沙佑美 京都大学, ウイルス・再生医科学研究所, 助教 (60883303)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 胎児性アルコールスペクトラム障害 / モデルマウス / 行動実験 |
Outline of Annual Research Achievements |
妊娠中の母親がアルコールを摂取すると、胎児の発育や脳に悪影響を与え、胎児性アルコールスペクトラム障害(fetal alcohol spectrum disorder;FASD)を引き起こす。特に中枢神経系への影響は、学習障害や認知・行動障害などの恒久的な障害に繋がる。このように、アルコールが胎児脳に与える影響は長年指摘されているが、FASDの発症機構は未だ不明であり、その治療法も確立されていない。本研究では、FASDモデルマウスを対象として、アルコールが胎児脳に与える影響および各種障害との関連を明らかにする。 本年度は、まず基準となるFASDモデルマウスの作製に主眼をおいた。これまでは、胎仔マウスにあらゆる濃度のエタノールを暴露させモデルマウスが作製されてきた。しかし、母体から胎仔にどれほどのアルコールが移行しているかを詳細にモニタリングした研究は無く、アルコール摂取量と胎仔への移行量、これらと脳障害との相関は曖昧なままである。今年度は妊娠マウスにエタノールを経口投与し、胎仔にアルコールを暴露させFASDモデルマウス作製した。この際母体エタノール血中濃度に加え、胎仔血中および胎仔脳エタノール濃度をモニタリングした。これにより、母体から胎仔へのアルコール移行量を正確に評価することに成功した。加えてヒトFASDガイドラインの診断基準に則り、作製したモデルマウスを行動実験により評価した。結果、3つの評価指標(Social、Cognitive、 Affective behavior)において、アルコール暴露量の異なるマウスで違う表現型を示し、アルコール暴露量と表現型の相関関係が示唆された。これはヒトFASDの症状・行動レベルを模倣したモデルマウスの作製に成功したともいえる。再現性の確認および詳細な解析は今後実施予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、アルコール暴露量がモニタリングできているFASDモデルマウスの作製に成功した。このモデルマウスは本研究の基準評価対象となるが、初年度で目標を達成できたので、本年度は順調に研究が進捗したと言える。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究により、ヒトFASD患者の症状・行動を模倣するFASDモデルマウスの作製に成功した。3つの行動指標 (Social、Cognitive、 Affective behavior) において、モデルマウスの評価を行ったが、再現性の確認およびより詳細なサブ解析は今後実施予定である。さらに、アルコールがヒト胎児脳にどのような影響を与え、どのように脳障害・行動障害を生み出すのかを、脳領域および細胞種レベルで明らかにする。
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Causes of Carryover |
次年度は、本年度実施した行動実験の再現性確認およびより詳細な解析を実施する。さらにアルコールがヒト胎児脳にどのような影響を与え、どのように脳障害・行動障害を生み出すのかを、脳領域および細胞種レベルで明らかにする。これらは、組織学的解析やウイルスベクターを用いた神経活動の操作およびイメージングによりアプローチする。そのため次年度は、モデルマウスへのウイルスベクター導入法の確立、ウイルスベクター作製、組織学的解析のための備品・消耗品に予算を使用予定である。
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