2021 Fiscal Year Research-status Report
活性型ビタミンKプロドラッグの肝細胞癌送達に寄与するトランスポーターの特定
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21K15288
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Research Institution | Fukuoka University |
Principal Investigator |
瀬戸口 修一 福岡大学, 薬学部, 講師 (80826032)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | ビタミンK / プロドラッグ / トランスポーター / 肝細胞癌 |
Outline of Annual Research Achievements |
ビタミンK2(VK)は骨粗鬆症治療薬としての実績から、きわめて生命予後の悪い肝細胞癌に対する安全な再発予防薬として強く期待されたが、大規模臨床試験では有効性を確立できなかった。申請者らは、VKが持つ抗がん効果は還元型VK(VKH)の肝細胞癌への効率的な送達によってもたらされると仮説を立てた。VKHは易酸化性で直接使用できないため、エステル型プロドラッグとし、このVKHプロドラッグが肝細胞癌細胞に効率よく取込まれ、細胞内再変換によってVKHを送達し、天然型VKよりも高い増殖抑制効果を示すことをこれまで明らかにした。もしHCC特異的な取込みが観察されればより安全な候補化合物として期待できる。本研究では当該プロドラッグの細胞取込み挙動の解明を目的とした。HCC細胞にDCP陽性であるPLC/PRF/5細胞とDCP陰性であるSK-Hep-1細胞を用いた。細胞内薬物量の測定はLC-MS/MSを用いた。当該プロドラッグの取込み速度はMichaelis-Mentenモデルに従い、プロドラッグは天然型よりも顕著に高い速度で取り込まれた。ビタミンK1とK2で比較したところ、細胞内の取込み速度は誘導体と天然型のいずれもK2の方が有意に高かった。また、プロドラッグの取込み速度は保温温度を低下させるにつれ低下した。細胞内取込みにおいてカチオン性修飾基と側鎖の影響が大きいと考えられた。取込みに温度依存性があることから能動輸送の可能性が示唆された。さらに、種々のトランスポーター阻害剤によるプロドラッグ取込みへの影響を確認したところ、小腸トランスポーターとして知られるNPC1L1の阻害剤であるエゼチミブによって有意に阻害されることが確認された。今後、NPC1L1のノックダウン等により、当該プロドラッグが基質となるかの確証を得る予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
申請者の学内異動により、業務内容が変化し、特に教育業務が増加したため、本研究課題に十分なエフォートを確保することができなかったものの、おおむね着実な結果が得られている。当初の計画で想定したトランスポーター(有機カチオントランスポーター、アミノ酸トランスポーター、ペプチドトランスポーター)の阻害剤においては、関心化合物であるプロドラッグの細胞取込みへの影響が認められなかった。一方、親化合物が基質になると報告されているNPC1L1トランスポーターの阻害剤であるエゼチミブを使用したところ、阻害効果が観察された。当該プロドラッグの取込み機構の解明において鍵となる知見が得られ、今後の検討課題が明確になったため、おおむね満足できる進展状況と判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
肝細胞癌のNPC1L1の発現をウエスタンブロット法で確認する。さらに、癌細胞でNPC1L1の発現が亢進しているかを確認するために、肝組織以外においても正常細胞と癌細胞(不死化細胞)のNPC1L1の発現を確認する。肝細胞癌細胞のNPC1L1タンパク質のノックダウンを試み、薬物取込みへの影響を確認する。細胞取込みへの影響を正確に判断できない場合には既報に従ってHEK293細胞へのNPC1L1の過剰発現を検討する。
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Causes of Carryover |
申請者のエフォートの確保が少なかったため、予定した費用の支出が少なかったが、進捗としては計画通りで、次年度に当該年度に予定していた細胞種の維持費用と抗体等のウエスタンブロット用の支出が見込まれる。
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