2023 Fiscal Year Research-status Report
喀痰からクラリスロマイシン耐性非結核性抗酸菌を直接検出する等温増幅法の開発
Project/Area Number |
21K15295
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Research Institution | Meijo University |
Principal Investigator |
稲垣 孝行 名城大学, 薬学部, 准教授 (90835406)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | クラリスロマイシン / Mycobacterium avium / 薬剤耐性遺伝子 / 23SrRNA / ARMS法 / LAMP法 / 肺MAC症 / 非結核性抗酸菌 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、遺伝子変異検出法であるARMS法及び等温遺伝子増幅法であるLAMP法を応用し、クラリスロマイシン耐性の有無を喀痰から直接DNAを抽出し、喀痰検体提出から数時間で特殊な機器が必要なく薬剤耐性の有無を判定するARMS-LAMP法を開発することを目的としている。 令和5(2023)年度の研究実施計画は、肺MAC症患者由来喀痰検体の収集ならびに、各解析方法の確立することである。 以下の研究成果が得られた。 名古屋大学医学部附属病院医療技術部・臨床検査部門・微生物検査室において臨床検査で不要となった残余検体の登録を開始した。2021年12月から2023年5月末現在にて55検体を登録した。検体材料は、喀痰39検体、気管支洗浄液11検体、その他5検体であった。塗抹検査については、蛍光法を用いて染色した。塗抹陽性検体15検体、塗抹陰性検体40検体であった。MGITによる培養検査結果について、培養陽性になるまでの判定日数は平均して11.4±4.6日であった。培養後PCRにて、Mycobacterium aviumと判定された検体は39検体、Mycobacterium intracellulareと判定された検体は16検体であった。培養後ブロスミックSGMを用いたクラリスロマイシンの薬剤感受性試験の結果、全ての検体で感受性を示した。このうち、最小発育阻止濃度0.5μg/mLを示す株が最も多く23検体であった。 菌株培養後の36検体について、DNA抽出を実施し、23SrRNAにおけるDNAシーケンス解析を試みた結果、全ての検体で野生株と判定された。 喀痰から直接DNAを抽出した55検体のうち、16検体を用いて2種類の鎖置換型DNA合成酵素 (Gsp、Bst)を用いてLAMP法による菌株の同定を試みたが、両酵素ともに同定することができなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
令和5(2023)年度の研究目的は、肺MAC症患者由来喀痰検体の収集ならびに、各解析方法の確立することである。令和5(2023)年度の研究実施計画に基づいて実施した研究の進捗状況から、当該年度における達成度については、現在検討中の項目もあるため、やや遅れていると考える。 1.登録した肺MAC症患者由来喀痰検体55検体の各検査について 2021年12月から2023年5月末現在にて55検体を登録した。検体材料は、喀痰39検体、気管支洗浄液11検体、その他5検体であった。塗抹検査については、蛍光法を用いて染色した。塗抹陽性検体15検体、塗抹陰性検体40検体であった。MGITによる培養検査結果について、培養陽性になるまでの判定日数は平均して11.4±4.6日であった。培養後PCRにて、Mycobacterium aviumと判定された検体は39検体、Mycobacterium intracellulareと判定された検体は16検体であった。培養後ブロスミックSGMを用いたクラリスロマイシンの薬剤感受性試験の結果、全ての検体で感受性を示した。このうち、最小発育阻止濃度0.5μg/mLを示す株が最も多く23検体であった。 菌株培養後の36検体について、DNA抽出を実施し、23SrRNAにおけるDNAシーケンス解析を試みた結果、全ての検体で野生株と判定された。 2.各解析方法の確立について 喀痰から直接DNAを抽出した55検体のうち、16検体を用いて2種類の鎖置換型DNA合成酵素 (Gsp、Bst)を用いてLAMP法による菌株の同定を試みたが、両酵素ともに同定することができなかった。現在、LAMP反応に使用する1回あたりのDNA量、各プライマー濃度、反応温度、反応時間、リアルタイム濁度計や電気泳動による検出方法の違い、などについて比較検討している。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究課題の今後の推進方策について、引き続き、肺MAC症患者由来喀痰検体の収集ならびに、各解析方法の確立することを追求する。そのため、令和6(2024)年度の研究期間中に下記の事項についての解析を行う。 1.喀痰検体については、名古屋大学医学部附属病院において肺MAC症と確定診断された患者からの喀痰検体、もしくは既に肺MAC症と確定診断されている患者からの喀痰検体、年間合計30検体程度を引き続き予定している。採痰は、患者 1 人につき 1 回とする。喀痰検体は、臨床検査で不要となった喀痰溶解酵素 (スプタザイム) で溶解および均一化した検体をN-アセチル-L-システイン・水酸化ナトリウム ( NALC-NaOH ) 法により前処理を行った後の残余検体を分与されたものについて各解析を実施する。 2.前年度未実施となった培養後に抽出したDNAを用いて、クラリスロマイシンの薬剤耐性に関与する遺伝子領域(23SrRNA)におけるDNAシーケンス解析を実施する。 3.喀痰から直接DNAを抽出した菌株のLAMP法を用いた同定方法の確立をする。また、喀痰から直接DNAを抽出した菌株におけるARMS-LAMP法を用いたクラリスロマイシン耐性化の判定を実施する。併せて、喀痰から直接DNAを抽出した菌株におけるARMS-PCR法を用いたクラリスロマイシン耐性化の判定を検討する。
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Causes of Carryover |
令和5(2023)年度分については、ほぼ使用済みとなった。年度末納品等に係る支払いが令和6(2024)年4月1日以降となったため、研究費が次年度へ繰り越しが生じた。当該支出分については、令和6(2024)年度の実支出額に計上する予定である。 令和5(2023)年度の研究実施計画において、培養後に抽出したDNAでのクラリスロマイシンの薬剤耐性に関与する遺伝子領域(23SrRNA)におけるDNAシーケンス解析が一部未実施である。上記計画については、令和6(2024) 年度において引き続き実施する予定であり、繰り越した研究費を使用する予定である。 令和6(2024)年度の研究実施計画に従って、研究を遂行するため、以下の様に研究費を執行する予定である。1.分与された残余検体である肺MAC症患者由来喀痰検体を、PURE DNA 抽出キットを用いて直接DNAを抽出し、LAMP法を用いた菌株の同定方法の確立およびARMS-LAMP法を用いたクラリスロマイシン耐性化の判定を実施する。2.液体培地マイコブロスを用いて培養した後、薬剤感受性試験を実施し、培養後に抽出したDNAでクラリスロマイシンの薬剤耐性に関与する遺伝子領域(23SrRNA)におけるDNAシーケンス解析を実施する。3.喀痰から直接DNAを抽出した菌株におけるARMS-PCR法を用いたクラリスロマイシン耐性化の判定を検討する。
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Research Products
(3 results)