2021 Fiscal Year Research-status Report
ヒト血液脳関門のモデル構築を基礎にしたゴーシェ病神経機能障害の病態解明
Project/Area Number |
21K15297
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
白井 玲美奈 熊本大学, 発生医学研究所, 特定事業研究員 (40870754)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 血液脳関門 / ゴーシェ病 / iPS細胞 / 病態解析 / 神経機能 |
Outline of Annual Research Achievements |
ゴーシェ病は、糖脂質であるグルコセレブロシドが全身の組織に蓄積し、中枢神経においても重い障害が生じる難病である。ゴーシェ病に対する治療では現在、酵素補充療法が用いられているが、酵素の血液脳関門の通過が困難であるため、神経症状に対する効果が期待できない。 これまで新しい治療法の開発を目的とした、動物細胞を用いたin vitroの血液脳関門モデルが開発されているが、ヒトと動物では血液脳関門トランスポータータンパク質発現量が大きく異なるため、モデルとしての難点となっている。 そこで本研究では、全てヒト細胞で構成された、in vitroにおけるヒト由来血液脳関門モデルの構築と、ゴーシェ病由来神経細胞またはミクログリアにおける機能障害の解明を目指す。 初年度は、まず、血液脳関門モデルを構築するため、ゴーシェ病由来iPS細胞から血管内皮細胞の誘導を行い、内皮細胞マーカーであるPECAM-1とVE-cadherinの発現を確認した。ゴーシェ病はライソゾーム内のβ-ガラクトシダーゼの異常によって引き起こされるため、ライソゾームマーカーの発現を検討した。また、ゴーシェ病の病態と関連すると想定される中枢神経機能解析のために、iPS細胞から神経細胞とミクログリアを誘導した。ミクログリアは神経細胞との共培養を長期間実施し、より成熟したミクログリアの維持を目指した。まず、誘導したミクログリアについて神経幹細胞マーカー、神経細胞マーカーの発現を検討した。また、生細胞測定試薬によって、細胞のviabilityについて検討した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
健常者由来またはゴーシェ病由来iPS細胞から血管内皮細胞をそれぞれ1クローンずつ誘導した。iPS細胞を内皮細胞の誘導因子存在下で6日間培養し、PECAM-1とVE-cadherinポジティブな分画をソートした。分取した健常者またはゴーシェ病由来血管内皮細胞において、96.5%、88.0%の誘導効率がそれぞれ得られた。蛍光免疫染色によって内皮細胞マーカーであるPECAM-1とVE-cadherinの発現を確認したところ、その発現には差は見られなかった。次に、ライソゾームマーカーであるLysotrackerで蛍光染色し、その蛍光強度のareaとintensityを測定した。ゴーシェ病由来血管内皮細胞は、健常者由来と比較して、areaとintensityがともに有意に減少していた。ことから、疾患細胞内におけるライソゾームの減少が示唆された。これは、他のライソゾーム病であるファブリー病由来血管内皮細胞でも同様の結果であった。 次に、iPS細胞から神経幹細胞を誘導し、神経細胞とミクログリアへの分化誘導を行った。神経細胞は分化後10% KockOut Selum Replacement/DMEM下で維持培養した。ミクログリアはiPS細胞から胚様体の形成後、マクロファージ前駆細胞を経て、IL-4、GM-CSF存在下で誘導した。より成熟したミクログリアを維持するため、健常者由来神経細胞との共培養を試みた。得られたミクログリアにおける神経幹細胞マーカーや神経細胞マーカーの発現をqRT-PCRで検討したところ、健常者由来と比較してゴーシェ病由来ミクログリアではMAP2とTUJ1のmRNA発現が有意に増加していた。次に、WST-8アッセイによって細胞のviabilityを検討した。健常者由来と比較してゴーシェ病由来ミクログリアとの共存により、神経幹細胞の生存数が有意に減少していた。
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Strategy for Future Research Activity |
初年度は、iPS細胞から3種類の血液脳関門構成細胞を誘導する計画であり、その中で血管内皮細胞の誘導に成功した。現在は、ゴーシェ病由来神経細胞とミクログリアの共存環境が、中枢神経機能にいかなる影響を与えるかについての解析を引き続き行なっている。令和4年度は、より詳細な中枢神経機能の解析を実施する予定である。また、ゴーシェ病由来iPS細胞から血液脳関門構成細胞を誘導することと並行して、新たに、ヒト初代培養ペリサイトとアストロサイトを購入することを検討している。ペリサイトとアストロサイトにおいて、ゴーシェ病の原因遺伝子を変異、またはCRISPR-Casを用いてノックダウンし、血液脳関門構成細胞として用いる。これらの細胞をトランスウェルにて共培養し、ヒト血液脳関門モデルの構築を目指す。
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Causes of Carryover |
当初は、血液脳関門構成細胞の機能評価のため、電気抵抗計と電極を購入する予定であった。しかし、予定を変更し、今年度はゴーシェ病由来iPS細胞から、目的細胞を誘導し、その機能評価を行った。機械購入の予定を次年度に持ち越すこととした。
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