2021 Fiscal Year Research-status Report
Elucidation of the functional significance of vascular endothelial dysfunction in VEGF inhibitors-induced nephropathy
Project/Area Number |
21K15300
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Research Institution | Iwate Medical University |
Principal Investigator |
二瓶 哲 岩手医科大学, 薬学部, 研究員 (30898888)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 血管内皮増殖因子(VEGF)阻害薬 / ベバシズマブ / 蛋白尿 / エンドセリン-1(ET-1) / 血管内皮機能障害 / ヒト糸球体微小血管内皮細胞 |
Outline of Annual Research Achievements |
ベバシズマブなどの血管内皮増殖因子(VEGF)阻害薬は種々のがん疾患に対するキードラッグとして重要な役割を担っているが、蛋白尿が用量制限毒性となり、投与の中断や減量の原因となる。組織学的に、ベバシズマブ使用患者の糸球体には内皮細胞障害像が認められる。また、VEGF受容体を含む複数のキナーゼを阻害するチロシンキナーゼ阻害薬を投与した動物モデルでは、血管内皮機能障害を反映するエンドセリン-1(ET-1)レベルが増加し、蛋白尿の重症度と関連することが報告されている。すなわち、VEGF阻害薬使用患者で血管内皮機能障害が蛋白尿と関連している事実を捉えることができれば、蛋白尿の重症度予測や治療ターゲットに関わる新たな知見を示すことができる。 本研究ではまず、ヒト糸球体内皮細胞(hGEC)におけるET-1産生に対するベバシズマブの影響を明らかにするために、in vitroの実験を行った。ベバシズマブはET-1mRNAレベルを約31~94%増加させ、培地中に分泌されたET-1タンパク質レベルを約20~52%増加させた。さらに、ET-1軸の活性化にAktの不活性化およびFoxO1の核局在化が関与していることを確認した。以上より、ベバシズマブがhGECにおけるET-1合成および分泌の増加を誘導することが明らかとなった。 次に、ET-1の血中濃度及び尿中への排泄量と蛋白尿との関連性を明らかにするために、ベバシズマブ使用患者の血漿及び尿中ET-1レベルを測定した。蛋白尿の重症度別にET-1レベルを比較した結果、Grade2以上群の血漿中ET-1レベルは発症なし群やGrade1群に比べて2.1~2.6倍の値であった。一方で、尿中ET-1レベルは蛋白尿の重症度との相関を示さなかった。以上より、血漿中ET-1レベルは蛋白尿の重症度と関連することが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本年度の研究計画では、ベバシズマブ使用患者における血管内皮機能障害の評価、さらにベバシズマブを処理したヒト糸球体内皮細胞馴化培地によるET-1を介したヒト糸球体上皮細胞障害の検討を予定していた。しかしながら、ベバシズマブ使用患者を対象とした臨床研究の症例集積に予定より時間を要し、血管内皮機能障害を評価する臨床研究及びヒト糸球体内皮細胞を用いたin vitroの実験のみに留まった。実施できなかった検討項目については、次年度に実施するものとする。
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Strategy for Future Research Activity |
ベバシズマブ使用患者から採取したサンプルを用いて、ELISA法により尿中ネフリンレベルを測定し、ベバシズマブによる糸球体上皮細胞の損傷レベルを評価する。さらに、尿中ネフリンレベルと蛋白尿との関連性から、尿中ネフリンレベルを臨床的に測定することの意義を検討する。また、血管内皮機能については、非侵襲的な血管内皮機能検査装置(Endo-PAT2000)を用いて測定し、ベバシズマブによる血管内皮機能障害及び蛋白尿との関連性を精査する。 in vitroの実験では、ベバシズマブによる糸球体内皮細胞由来のET-1を介したヒト糸球体上皮細胞障害を評価するため、ベバシズマブを処理したヒト糸球体内皮細胞馴化培地とエンドセリン受容体拮抗薬を用いて、ウエスタンブロット法によりネフリン発現量を解析する。さらに、べバシズマブとFoxO1阻害薬を同時処理したヒト糸球体内皮細胞の馴化培地を用いて、ヒト糸球体内皮細胞及びヒト糸球体上皮細胞に対するFoxO1阻害薬の保護効果を検討する。
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Causes of Carryover |
本年度では、ベバシズマブによる糸球体内皮細胞由来のET-1を介したヒト糸球体上皮細胞障害の検討を予定していたが、ベバシズマブ使用患者を対象とした臨床研究の症例集積に予定より時間を要し、実施することができなかったため、未使用額が生じた。 そのため、ヒト糸球体上皮細胞障害の検討は次年度に行うこととし、未使用額はその経費に充てることとした。
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Remarks |
researchmap https://researchmap.jp/snihei
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