2022 Fiscal Year Research-status Report
胎児への安全性向上を目的としたジアゼパムのPEG修飾リポソーム製剤化に関する研究
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21K15305
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Research Institution | Josai University |
Principal Investigator |
北岡 諭 城西大学, 薬学部, 助教 (50824778)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | ジアゼパム / 薬物動態 / 胎児 |
Outline of Annual Research Achievements |
子癇発作は、妊娠高血圧症候群の合併症であり、我が国における妊婦死亡の主たる要因の一つであり、子癇発作の治療にはジアゼパムが用いられている。研究代表者は、ジアゼパムを妊娠中期に使用した際、その代謝物オキサゼパムの母体から胎児への移行性が著しく高いことを報告している。この先行研究を基に、本研究では胎児でのオキサゼパム毒性発現回避する方法を開発することを目的としている。具体的には、ジアゼパムをリポソーム製剤化し、母体肝臓でのCYP3A4及びCYP2C19によるジアゼパムからオキサゼパムへの変換を阻害することにより、母体から胎児へのオキサゼパムの移行量を低下させられるか否かについて解析する。 2022年度は、研究代表者の所属研究機関が変わったことから、まず初めにジアゼパム及びその代謝物(デスメチルジアゼパム、オキサゼパム)の定量分析系の再構築を進めた。その結果、これまでと同様に逆相とイオン交換の2つのカラムケミストリーによりターゲット分子を保持するミックスモードのカラムを用いた固相抽出法によりサンプルをクリーンナップし、遠心式エバポレーターによって溶媒を留去し、グラジエント開始時の移動相で再溶解することにより質量分析系での測定に問題ない試料溶液の調製が可能となった。加えて、新たな所属機関に利用可能なLC-MS/MSでジアゼパム及びその代謝物の分析に用いるMultiple Reaction Monitoring(MRM)メソッドの作成が終了し、現所属機関においてもジアゼパム及びその代謝物の定量分析が可能となった。また、動物実験に必要なその他の周辺機材の調達が終了したことから、次年度はジアゼパムとジアゼパムリポソーム製剤の薬物動態を代謝物も含め解析することを予定している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
前述通り、2022年度は新たな所属機関に移動した初年度であったことから、実験系の再構築を行う必要があり、予定していたジアゼパムのリポソーム製剤化の検討を進めることが出来なかった。一方で、前所属機関在籍時に構築した実験系の多くを再構築することが完了したことから、次年度は本研究の完遂に向けた活動が可能であると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
2023年度は、まず初めにジアゼパムのリポソーム製剤化を脂質薄膜法にて検討することを予定している。具体的には、L-α -ホスファチジルコリン、コレステロールと適切なPEG修飾荷電脂質をジアゼパムと共にクロロフォルム / メタノール混合溶媒に溶解し、エバポレーターにて溶媒を留去することで脂質薄膜を調製する。真空条件で脂質薄膜を十分に乾燥させた後、適切なpHに調整した塩酸水溶液を加え、振盪攪拌することでジアゼパム封入PEG修飾リポソーム懸濁液を調製する。使用する際は、緩衝液で希釈することでpHを調整する。 調製したジアゼパム封入PEG修飾リポソーム製剤の物性評価として、ジアゼパムの封入率、粒子系及びゼータ電位の測定を予定している。その中で、上述の物性が生体に適用する上で適切でない場合、荷電脂質の種類を変更する等の対策を講じることを計画している。 生体に適用しうるジアゼパム封入PEG修飾リポソーム製剤の調製が完了した後、妊娠中期(解剖時に妊娠14.5日)のマウスを用いた薬物動態試験を行う。その際、対照群として製剤化前のジアゼパムを投与する。妊娠マウスを用いたジアゼパムの薬物動態試験に関しては、すでに実施した経験を有していることから、問題無く遂行することが可能と考える。 以上、2023年度は、最終年度として、本研究課題の核心をなす学術的「問い」である「従来のジアゼパム製剤をジアゼパム内包PEG修飾リポソーム製剤に変更することで、ジアゼパム自体の母体から胎児への移行量を低下させることができるか、加えて、リポソーム製剤化により母体の肝臓におけるジアゼパムからオキサゼパムへの代謝反応を軽減させ、胎児へのオキサゼパムの移行量を低下させることができるか」の解を明らかにするよう努める。
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Causes of Carryover |
2022年度は新たな所属機関に移動した初年度であったことから、実験系の再構築を行う必要があり、予定していたジアゼパムのリポソーム製剤化の検討を進めることが出来なかったため。
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