2021 Fiscal Year Research-status Report
新たな乳がん治療薬を目指したアリル炭化水素受容体アゴニストの検討
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21K15307
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Research Institution | Doshisha Women's College of Liberal Arts |
Principal Investigator |
山下 直哉 同志社女子大学, 薬学部, 特任助教 (50846649)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | アリル炭化水素受容体 / 乳がん |
Outline of Annual Research Achievements |
これまでに申請者は、アリル炭化水素受容体(AhR)アゴニストがAhR依存的に乳がん腫瘍様塊の形成を抑制すること、さらに、そのメカニズムの一端を明らかにしている。しかしながら、そのメカニズムについては未だ不明な点が残されている。そこで本研究では、がんの悪性化に関与する細胞内シグナル伝達経路に対するAhRアゴニストの影響を検討することとした。 本年度は、様々ながんの悪性化に関与するヒト上皮成長因子受容体(HER)の発現に対するAhRアゴニストの影響を検討した。その結果、ヒト乳がん細胞株MCF-7およびT47D細胞において、HER1(EGFR)とHER4遺伝子の発現が外因性・内因性AhRアゴニストにより減少することを見出した。また、AhRアゴニストによるEGFRとHER4の発現減少は、AhR依存的であることをsiRNAによるAhRの発現抑制およびCRISPR/Cas9によるAhRノックアウト細胞株を用いた実験により明らかにした。さらに、AhRアゴニストによるEGFRおよびHER4を介したシグナル伝達経路への影響を検討するために、EGFRとHER4のリガンドを用いて、その下流タンパク質のリン酸化を評価した。その結果、EGFRとHER4のリガンドにより惹起されたERKのリン酸化がAhRアゴニストの前処理により抑制されることを見出した。 以上のことから、ヒト乳がん細胞株において、AhRアゴニストはEGFRおよびHER4の発現を抑制し、それらを介した細胞内シグナル伝達経路を抑制する可能性を見出した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度の目標は、AhRアゴニストによるがんの悪性化に関与する細胞内シグナル伝達経路への影響を検討することであった。その結果、AhRアゴニストがAhR依存的にEGFRおよびHER4の発現を抑制することを見出すことができた。また、AhRアゴニストによる細胞内タンパク質の網羅的な発現変動解析を実施し、EGFRおよびHER4以外の細胞内シグナル伝達分子も検討している。以上のことから、本申請課題は、おおむね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
AhRがEGFRおよびHER4遺伝子の発現を直接的に制御しているかを明らかにするため、ルシフェラーゼレポーターアッセイやクロマチン免疫共沈降法などを用いて検討する。また、AhRアゴニストがEGFRおよびHER4のリガンドによるがんの悪性化(細胞増殖、遊走、浸潤、腫瘍様塊の形成など)を抑制するか検討する。
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Causes of Carryover |
2021年度に実施した網羅的な解析や消耗品の購入では、キャンペーンを活用することができたため、若干の差額が生じた。この差額は、2022年度の消耗品費として使用する予定である。
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