2022 Fiscal Year Research-status Report
がん化学療法誘発味覚障害における味覚神経変性の関与とそのメカニズム解析
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21K15313
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
宗 可奈子 京都大学, 薬学研究科, 助教 (50816684)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 味覚障害 / がん化学療法 / 末梢神経障害 |
Outline of Annual Research Achievements |
味覚障害は、がん化学療法において誘発される副作用の一つであり、抗がん剤投与中の患者の約6割に現れる、最も発現率の高い副作用である。この味覚障害は、患者に大きな影響をもたらし、食事量の低下から栄養状態の悪化を引き起こす。さらに食の楽しみが低下することでQOLの低下も招く。しかし、その有効な予防法や治療法は確立していないのが現状である。この味覚障害は様々な抗がん剤で惹起されるが、その中でも白金系やタキサン系の抗がん剤などは神経変性を伴う末梢神経障害を引き起こす。そしてこれまでの研究で、シスプラチンを連続投与した味覚障害モデルラットにおいて味覚神経の変性が惹起されることを明らかにしてきた。そこで本研究は、抗がん剤によって惹起された味覚神経変性が味覚障害を引き起こすのではないかという視点でメカニズム解析を行い、新たな治療ターゲットの探索を行うことを目的としている。本年度は、甘みや苦味といった味覚刺激に対する神経発火などの味覚神経活動を記録するために、電気生理学的手法を用いた測定系の作成に着手した。また、シスプラチンを連続投与して作成した味覚障害モデルラットから味覚舌神経を採取し、神経軸索のミエリンを形成するシュワン細胞を用いて、脱分化シュワン細胞マーカー、成熟シュワン細胞マーカー、シュワン細胞が構成するミエリンの構成タンパク質の発現変動について、realtime-PCRにより検討を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
realtime-PCRでは、1匹のラットから採取できる舌神経サンプル量が非常に少なく、サンプルの保存方法やRNAの抽出方法の検討に時間を要した。
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Strategy for Future Research Activity |
シスプラチンを連続投与して作成した味覚障害モデルラットの舌神経において、発現変動のある分子をさらに絞り込んでいく。さらに、その分子をAAVベクターなどを用いて、ノックダウンすることで、舌神経変性への影響を検討する。
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Causes of Carryover |
realtime-PCRにおいて、プロトコル作成には時間を要したが、実際のモデル動物を用いての検討では想定よりも少ない数の動物数で実験を行えたため。また、組織免疫染色まで検討できず、消耗品等の購入が少なくなったため。 使用計画としては、翌年度以降のモデル動物作製及び消耗品に使用する。
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