2021 Fiscal Year Research-status Report
選択的BRAF阻害剤のポドサイト保護・毒性作用を決定付ける真の標的分子の同定
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21K15319
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Research Institution | Nagoya City University |
Principal Investigator |
真川 明将 名古屋市立大学, 大学院薬学研究科, 助教 (20827670)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 薬剤性腎障害 / 低分子化合物 / キナーゼ阻害剤 / 細胞毒性 / オフターゲット作用 / ケミカルバイオロジー |
Outline of Annual Research Achievements |
2021年度は、ヒト腎臓由来の近位尿細管上皮細胞(RPTEC)をもちいた毒性評価により、BRAF阻害薬ベムラフェニブが他のBRAF阻害薬ダブラフェニブや同一シグナル経路のMEK阻害薬より強い細胞毒性を有することを見出した。この結果についてはAnticancer drugs誌に報告し、採択された。また、同時期に海外からベムラフェニブの尿細管毒性にはBRAF阻害作用はかかわらず、ヘム合成の最終酵素であるフェロキラターゼの活性阻害作用が部分的に関わるという報告があった(Bai Y, et al. Kidney Int. 2021)。しかしながら、ベムラフェニブの尿細管毒性発現はフェロキラターゼの活性阻害作用のみで説明できず、未知の標的因子が関わる可能性が示唆された。そこで、ベムラフェニブの化学構造に一部変更を加えた誘導体を取得し、それらの尿細管毒性評価をおこなったところ、ベムラフェニブの化学構造に一部でも欠損のある誘導体では細胞毒性は軽減される傾向がみられた。その一方で、ベムラフェニブに保護されたアミノ基リンカーを付加した化合物ではベムラフェニブと同等の細胞毒性が維持されていた。この化合物をナノ磁気ビーズに固定化し、ベムラフェニブ固定化ナノ磁気ビーズ(Vemビーズ)を取得した。VemビーズはRPTEC抽出液と反応させ、プルダウン実験をおこなった。プルダウンサンプルについてSDS-PAGEおよび銀染色でバンドを確認したところ、RTPECの膜/オルガネラ画分において3つのバンドを視認することができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画では、まずBRAF阻害薬GDC-0879のポドサイト保護作用に関わる未知標的分子の探索を進める予定であったが、当研究室で使用したポドサイト由来の培養細胞においては既報のポドサイト保護作用が確認できなかった。ゆえに、BRAF阻害薬ベムラフェニブの腎毒性作用に関わる未知標的分子を探索を進めることとした。この際、海外からの報告で、ベムラフェニブの腎毒性は尿細管特異的なものである詳細な報告があり、尿細管へターゲットを変更することとなった。当初の計画とは大きく研究計画を修正することとなったが、ベムラフェニブの誘導体を合成し、それらの細胞毒性評価は順調に進んだ。また、ケミカルプルダウン実験からベムラフェニブの尿細管毒性に関わる未知標的分子の候補を捉えることができた。そのため研究の進捗に支障は生じておらず、おおむね順調に進展していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究では、RPTECの膜/オルガネラ画分からベムラフェニブ固定化ナノ磁気ビーズでプルダウンされた3つの未知標的分子の解析を進める。まずは、質量分析装置によるプロテオーム解析により未知標的分子の同定をおこなう。標的分子が同定された後は、生化学的な手法をもちいて、ベムラフェニブがその標的分子の機能に与える影響および細胞死に至るメカニズムを明らかにしていくことを予定している。
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