2021 Fiscal Year Research-status Report
ヒト脳微小環境を再現するヒトiPS細胞由来血液脳関門マイクロチップの構築と評価
Project/Area Number |
21K15321
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Research Institution | Teikyo University |
Principal Investigator |
黒澤 俊樹 帝京大学, 薬学部, 助教 (90839466)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 血液脳関門 / トランスポーター / ヒトiPS細胞 / 3次元培養 / MPS / Organ-on-a-chip |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、ヒト脳の微小環境を再現した三次元流体モデルを開発することである。血液脳関門 (BBB) の機能研究については、げっ歯類や家畜動物の脳を用いて発展してきた一方で、ヒトBBBの機能については現在のところ不明な点が多い。ヒトの脳組織の入手が困難であることに加え、ヒト個体での試験が不可能に近いことが原因である。ヒトBBBの生理的機能と薬物輸送機能が解析でき、脳微小環境を再現した実験デバイスの開発が求められている。 2021年度、我々はヒトiPS細胞由来脳毛細血管内皮細胞 (hiPS-BMECs) をMIMETAS社OrganoPlate 3-lane plateに搭載したBBBマイクロチップを開発に成功した。本デバイスの構築により、血管を模した管状構造やshear stressの負荷を再現した培養が可能となった。hiPS-BMECsの最大の特徴である強力な密着結合能は本デバイス上でも維持しており、排出トランスポーターのBCRP (ABCG2)、栄養やアミノ酸を輸送するCAT1 (SLC7A1)、GLAST (SLC2A3)、MCT1 (SLC16A1) 等が機能していることが明らかとなった。さらに、本デバイスにおいて、中性アミノ酸トランスポーターLAT1 (SLC7A5) は血液側から脳側へ輸送を担うことが示唆され、これまでに報告されてきたLAT1の機能を再現できることが明らかとなった。その一方で、hiPS-BMECsの欠点であったP-gp (ABCB1) の機能は、脳微小環境を再現した本デバイス上においても非常に弱く、hiPS-BMECsの改良が必須である。 本研究で開発するBBBマイクロチップはヒトの脳微小環境を再現するだけでなく、OrganoPlate 3-lane plateを用いることで高いスループット性を保つことが可能である。ヒトBBBの機能解明だけでなく、効果的な中枢疾患治療薬の開発に有用な実験デバイスになることが期待できる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2021年度 実験計画の80%が完了した。2021年度に計画されていた「hiPS-BMECsを搭載したBBBマイクロチップの構築」は既に完了し、国際誌および国内の複数の学会で報告することで、hiPS-BMECsとOrganoPlate 3-lane plateを組み合わせたBBBマイクロチップの有用性を発信することができた。その一方で、脳内の微小環境を模倣することによりP-gpの発現量および機能の増強を予想していたが、期待された成果は得られなかった。そのため、hiPS-BMECsの改良を次年度以降に検討する。
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Strategy for Future Research Activity |
2022年度は、①「BBB周辺細胞を搭載した共培養BBBマイクロチップの構築」②「トランスポーターおよび受容体タンパク質の発現局在解析」をテーマに研究を進める。「BBB周辺細胞を搭載した共培養BBBマイクロチップの構築」は、ヒト由来のアストロサイトやペリサイト、神経細胞をOrganoPlate 3-lane plateの脳側レーンに播種することで構築する。現在、アストロサイト、ペリサイトの初代培養細胞の培養法を当研究室にて確立し、OrganoPlate 3-lane plate上での共培養法の条件検討を進めている。「トランスポーターおよび受容体タンパク質の発現局在解析」は、BBBマイクロチップ上のhiPS-BMECsに発現するトランスポーターおよび受容体について、免疫染色やwestern blot解析を実施し局在性を明らかにする。ヒト初代培養脳毛細血管内皮細胞における局在性と比較することで、本マイクロチップのヒトBBB再現性について評価する。 また、2021年度の検討で明らかになった「本BBBマイクロチップにおけるP-gp機能の欠如」に対して、我々はhiPS-BMECs自体の改良に既に着手している。BBBにおいて異物や薬物を脳側から排出する重要な機能を担うP-gpの遺伝子をhiPS-BMECsに導入し、P-gpが高発現したhiPS-BMECsを調製するすることで、よりヒトBBBの機能を模倣するBBBマイクロチップを開発する。
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Causes of Carryover |
2021年度における検討で明らかとなった「本BBBマイクロチップにおけるP-gp機能の欠如」について、P-gp遺伝子の導入後に分化誘導方法の検討および2次元培養での発現および機能の評価を実施する必要がある。これらの検討が終了次第、本研究の目的であるBBBマイクロチップ上での培養を実施するため、2021年度に充てられた研究費に未使用額が生じた。2022年度に計画されている共培養BBBマイクロチップの開発とトランスポーターの発現局在解析の研究費に充てる予定である。
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Research Products
(8 results)