2021 Fiscal Year Research-status Report
ベクトリアル輸送に基づく薬剤性腎障害機構の解明及び筋肉との臓器連関
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21K15323
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Research Institution | Toho University |
Principal Investigator |
佐々木 将太郎 東邦大学, 薬学部, 講師 (50780300)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | トランスポーター / pH依存性 / 薬剤性障害 / 有機アニオン |
Outline of Annual Research Achievements |
医薬品には腎毒性を示すものが多く、患者の腎機能低下によって、医薬品の使用が限定され、充分な治療を提供することができない、あるいは、医薬品の腎毒性によって患者の腎機能の低下を加速させてしまう等の問題が生じている。この問題は腎毒性を示す薬物を認識する輸送担体のベクトリアル輸送により引き起こされていると考えられる。また、薬剤性筋障害についても、重篤な場合には、大量に流出したミオグロビンが尿細管を傷つけ、腎機能を低下させることが知られている。薬剤性筋障害の予防によって腎機能低下を回避できることから、臨床的な腎保護戦略では、複数臓器にまたがった薬剤誘発性障害の対策が必要となっている。すなわち、輸送担体の多岐にわたる組織分布により引き起こされる薬剤誘発性臓器障害を制御することが臨床上の課題となっている。そこで本研究では、腎臓および筋肉において、医薬品を認識し、生体膜の透過を担う新たな輸送担体の機能とその分子実体、および薬剤誘発性臓器障害との関連を明らかにすることを目的としている。2021年度は、有機アニオン輸送担体を介した尿細管再吸収機構および骨格筋における有機アニオン輸送担体の基質認識性について検討し、以下の結果を得た。 酸性条件で輸送活性が増大する有機アニオン輸送担体が尿細管刷子縁膜側に発現しており、アニオン性薬物および内因性物質の再吸収に寄与していることが示された。 骨格筋と心筋の有機アニオン輸送担体の基質特異性には一部差異が認められた。骨格筋の有機アニオン輸送担体は、臨床上、筋障害を引き起こすことが報告されているアニオン性薬物を基質として認識することが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2021年度は、各種細胞や刷子縁膜小胞を用いて、有機アニオン輸送担体の機能レベルでの解析を行った。その結果、エストロン硫酸やパラアミノ馬尿酸、尿酸等の有機アニオン輸送担体の典型的な基質を認識しない新たな有機アニオン輸送担体が、医薬品や内因性化合物の膜透過に関与していることが示された。この有機アニオン輸送担体によって輸送される基質は、共通構造としてカルボン酸構造を有していることから、モノカルボン酸輸送担体のアフリカツメガエル卵母細胞発現系を用いて輸送解析を行った。しかしながら、モノカルボン酸輸送担体を介した顕著な輸送は認められなかった。 骨格筋と心筋では、有機アニオン輸送担体の基質特異性に差異が認められたことから、組織選択的な薬剤性障害や疾患への関与が考えられた。現在は上記解析と併行して、新たな有機アニオン輸送担体の候補遺伝子を絞り込み、アフリカツメガエル卵母細胞発現系を用いた機能評価にも着手している。
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Strategy for Future Research Activity |
上記進歩状況のように、ほぼ予定通りに進展している。研究2年目については当初の計画に従って、輸送担体のより詳細な機能解析を行うとともに、輸送担体の機能と薬剤性組織障害の関連性について検討を進めていく。
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