2021 Fiscal Year Research-status Report
腫瘍DDS技術の機能対効果分析を可能とするPK/PDモデル評価系の確立
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21K15324
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Research Institution | Doshisha Women's College of Liberal Arts |
Principal Investigator |
山下 修吾 同志社女子大学, 薬学部, 助教 (30845730)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 薬学 / 薬物動態学 / 腫瘍組織内動態 / 体内動態制御 / 高分子ミセル |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は能動輸送型・受動輸送型DDSの観点および薬物放出システムの観点から、DDS製剤中の抗がん剤の腫瘍移行性と抗がん作用を評価し、それらのパラメータを組み込んだPK/PD解析によりDDSの機能対効果が評価可能な分析法を確立することを目指すものである。令和3年度では、DDS製剤中抗がん剤の腫瘍移行性を評価する単離腫瘍灌流実験用のラット単離腫瘍標本の作製およびドキソルビシン(DOX)ならびにDOX封入高分子ミセルの基本的灌流動態解析を試みた。ラット単離腫瘍標本は、Walker256細胞をラット左卵巣近傍脂肪組織にコラーゲン三次元培養基材を用いて播種した後に、腫瘍重量が20g程度に成長した固体を実験に用いた。左腎動静脈付近より分岐している腫瘍血管にカニュレーションを施し、腫瘍中心部にマイクロダイアリシス用透析プローブを挿入した。腫瘍体積に対して10mg DOX/kgとなるようにDOX含有灌流液を腫瘍へ6時間灌流し、経時的に種々の灌流液を採取した。灌流液中DOXをLC/MS/MSにて定量した後にPKパラメータを算出した。最高腫瘍内DOX濃度時間tmaxはDOX単剤投与で10分だった一方で、高分子ミセル封入DOXのtmaxは150minを示した。DOX単剤投与ならびに高分子ミセル封入DOXそれぞれの腫瘍内濃度-時間曲線下面積はそれぞれ23.8μg×hr/mL、80.7μg×hr/mLを示した。以上、本研究成果をさらに発展させることにより、DDSの機能対効果が評価可能な分析法の確立へと近づく成果を得ることに成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
昨年度の世界的なサプライチェーンの乱れに伴う半導体不足により、灌流実験に必要なローラーポンプの納期が11月頃に遅延したため、研究の進捗が遅れる結果となった。一方で、ラット単離腫瘍標本作製方法の確立、および灌流回収液からのDOX損失率を最小限に抑えた灌流方法の確立が達成できたことから、安定した灌流実験が実施可能となった。加えて、様式の異なる化学結合を介して担持させたDOX封入高分子ミセルの作製および高分子ミセル表面に葉酸を修飾したDOX封入高分子ミセルの作製も達成しており腫瘍灌流実験に必要な準備は整っている。今後は研究の遅れを取り戻し、DOX封入高分子ミセルの腫瘍取り込み速度変化や腫瘍内におけるDOX放出速度の定量的観察を実現することを目標に研究に取り組む。
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Strategy for Future Research Activity |
令和3年度までに、ラット単離腫瘍標本作製方法の確立、灌流回収液からのDOX損失率を最小限に抑えた灌流方法の確立、ならびに様式の異なる化学結合を介して担持させたDOX封入高分子ミセルの創製が達成できた。そこで令和4年度では、アミド結合、エステル結合、ヒドラゾン結合など様式の異なる化学結合を介して担持させたDOX封入高分子ミセルや葉酸をミセル表面に修飾したDOX封入高分子ミセルを用いて腫瘍灌流実験を実施することで、高分子ミセルに封入されたDOXの腫瘍放出速度、腫瘍滞留時間、腫瘍取り込みクリアランスなど薬物動態学的パラメータを評価することで、DDSの機能対効果が評価可能な分析法の確立を目指す予定である。
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Causes of Carryover |
当該年度の研究に係る支出の残金として次年度使用額が生じた。次年度の助成金と合わせて、次年度に計画している研究の物品費として使用予定である。
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