2022 Fiscal Year Research-status Report
平滑筋線維の多様な集合様式に着眼した直腸前方領域の解剖学的解析
Project/Area Number |
21K15329
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Research Institution | Tokyo Medical and Dental University |
Principal Investigator |
室生 暁 東京医科歯科大学, 大学院医歯学総合研究科, 助教 (30844360)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 直腸 / 肛門管 / 平滑筋 / 解剖学 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、直腸前方領域の平滑筋線維の多様な集合様式に着眼し、平滑筋構造を肉眼解剖および免疫組織学的に解析した。現在得られているデータから、以下のことが明らかになってきた。 1.直腸前方において、平滑筋が直腸壁を構成するだけにとどまらず前方領域へと延び出している 2.直腸の縦走筋、輪走筋の平滑筋線維がそれぞれ異なる高さで前方に延び出している 3.直腸前方の平滑筋組織は、下部の方が細胞密度が高く、上部の方が細胞密度が低い 4.直腸前方の平滑筋組織は、正中部が最も細胞密度が高く、傍正中部(直腸前外側部)は比較的細胞密度が低い このように管腔臓器の壁を構成する平滑筋が周囲へと延び出す構造は、骨盤内臓器にのみ見られる特殊な構造である。このような骨盤底領域に特徴的な平滑筋組織について、構造の基本パターンや詳細な組織学的性状がいまだ解明されておらず、課題として残されている。直腸前方の平滑筋の構造が明らかになれば、骨盤底領域における平滑筋組織の機能的意義の解明につながる。現在得られているデータの解析をさらに進め、縦走筋、輪走筋の平滑筋線維の広がりと線維配向性を定量化・可視化することで、排便メカニズムを解明するための基盤的知見となると考えている。さらに、直腸前方領域の平滑筋線維の細胞密度の解析は、下部直腸癌手術における合理的な剥離層の決定に有用となる。直腸肛門管領域の解剖学的基盤を確立することで、内視鏡下手術やロボット手術を高精度で施行することが可能になると考えられる。引き続き臨床応用を視野に入れた解剖学的基盤の構築を目指し、研究を進めていく。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
免疫組織学的解析を含む、直腸前方領域の網羅的な組織学的データを取得することに成功した。 さらに、『広範連続組織切片に基づく三次元再構築法』(Muro and Akita, 2023, ASI)という手法を応用し、平滑筋線維の広がりと空間配置を三次元的に可視化することに成功した。 定量化の具体的な手法の確立が今後の課題となる。
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Strategy for Future Research Activity |
網羅的な免疫染色像を画像処理ソフトウェア(Image J)で解析し、各部位における平滑筋線維の密度を定量化する。 線維配向性を解析するソフトウェア(Fiber orientation analysis)を用い、平滑筋線維の配向性を定量化する。
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Causes of Carryover |
当該年度はコロナ禍の影響で国際学会への参加が難しく、旅費としての使用額が想定よりも少なかったため、次年度使用額が生じた。 次年度では国際会議への参加が計画されており、旅費や参加費用が必要となる。これにより、国際的な研究交流や研究成果の共有が促進される。また円安のために英文校正費用や投稿料が高騰することが予想されるため、それらの研究発表にかかる費用にあてる予定である。
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Research Products
(8 results)