2021 Fiscal Year Research-status Report
唾液腺機能の回復を目指した唾液産生・唾液腺形成メカニズムの解明
Project/Area Number |
21K15336
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Research Institution | Himeji Dokkyo University |
Principal Investigator |
海堀 祐一郎 姫路獨協大学, 薬学部, 助教 (70845776)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 唾液腺 / 唾液 / 分化 / ケモカイン / 組織幹細胞 |
Outline of Annual Research Achievements |
外界に接している口腔内は常に様々な病原菌に晒されている。そのため、口腔内では唾液腺で産生された唾液が細菌の浸潤から口腔内粘膜を保護している。予備検討において、ケモカインCCL28を欠損したマウスでは唾液量が低下する事を見出している。そこで本研究では、CCL28がどのようにして唾液産生に寄与するのか、その詳細なメカニズムを解明することを目的とした。 唾液腺は水成分を分泌する漿液腺とタンパク質成分を分泌する粘液腺から構成されている。また、唾液腺は主に顎下腺、耳下腺、舌下腺に分類されるが、粘液腺と漿液腺の混合腺である顎下腺を用いて、CCL28の唾液腺における機能解析を行った。アルシアンブルーを用いて酸性粘液の染色を行った結果、野生型マウスと比較して、CCL28欠損マウスではアルシアンブルーの染色性の低下、すなわち酸性粘液が減少する様子が観察された。唾液腺も他の粘膜組織と同様、外分泌液(粘液性唾液)が唾液腺内への細菌の浸潤から保護している。CCL28欠損マウスにおいて酸性粘液の低下が認められたため、それぞれのマウスの顎下腺についてグラム染色を行ったところ、野生型マウスではグラム陽性菌の浸潤は認められなかった一方で、CCL28欠損マウスではグラム陽性菌の浸潤が一定頻度で認められた。粘膜組織では粘液に加えてIgA抗体が粘膜保護に寄与し、また、ケモカインCCL28の主な機能は全身の粘膜組織へのIgA陽性形質細胞の配置である。そこで顎下腺におけるIgA陽性細胞を調べたところ、野生型とケモカイン欠損マウス間でのIgA陽性形質細胞の数に明確な差は認められなかった。これらのことから、CCL28は、広く認識されている機能であるIgA陽性形質細胞の集積とは異なり、酸性粘液の産生亢進を介して唾液腺組織(顎下腺)を細菌の浸潤から保護している可能性が考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
令和3年度に実施した内容から、ケモカインCCL28が従来の機能である細胞遊走能とは異なり、粘液性唾液の産生を介して唾液腺(顎下腺)内への細菌の浸潤から保護している可能性が示唆された。特に、生理的条件化においてCCL28欠損マウスの顎下腺において細菌の浸潤が観察されたことは、CCL28が生体防御において重要な役割を持つことを示唆する重要なデータと考える。また、唾液腺をex vivoで器官培養する手法を導入し、確立できたことも今後の本研究を推進してく上で大きな成果と言える。以上のことから、「おおむね順調に進展している」と判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
CCL28欠損マウスでは唾液産生の低下が認められたことから、その要因として、①CCL28欠損マウスでは唾液腺幹細胞の分化制御が破綻している、あるいは、②腺房細胞における唾液産生制御が破綻していることの大きく分けて2つの可能性が考えられる。①の幹細胞については、唾液腺では明確に同定はされていないものの、いくつかの唾液腺幹細胞の候補マーカー分子が報告されている。そこで、それらのマーカー候補分子の発現を野生型とCCL28欠損マウスで比較する。②の腺房細胞の機能については、腺房細胞の主要構成分子の発現を比較する。これらの解析を通じて、唾液産生におけるCCL28の作用点を推測したいと考えている。また、進捗によっては、令和3年度に確立したex vivo実験系を用いて、阻害剤ライブラリーを使用してCCL28の上流分子の探索についても実施する予定である。
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