2022 Fiscal Year Research-status Report
唾液腺機能の回復を目指した唾液産生・唾液腺形成メカニズムの解明
Project/Area Number |
21K15336
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Research Institution | Himeji Dokkyo University |
Principal Investigator |
海堀 祐一郎 姫路獨協大学, 薬学部, 助教 (70845776)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 唾液腺 / 唾液 / 分化 / ケモカイン |
Outline of Annual Research Achievements |
多数の細菌が存在する口腔内では、外分泌腺である唾液腺から分泌された唾液が、細菌の浸潤から口腔内粘膜を保護している。昨年度までの解析において、ケモカインCCL28欠損マウスの唾液腺では粘液性唾液の産生量が低下することや、それに伴って唾液腺内に浸潤する細菌が減少することを見出してきた。令和3年度に実施したアルシアンブルー染色を用いた解析に加えて、レクチンや粘液構成分子であるムチンの発現を観察したところ、いずれもCCL28欠損マウスの唾液腺では発現が低下していた。令和3年度の結果も踏まえると、CCL28が唾液腺の機能制御に寄与する可能性が強く示唆された。そこで、CCL28欠損による唾液腺機能低下の一因として、唾液腺幹細胞から腺房細胞(唾液産生細胞)への分化制御の破綻の可能性について検討した。唾液腺幹細胞の同定には至っていないものの、幹細胞マーカーの候補分子がいくつか報告されている。それらの候補分子について解析した結果、CCL28欠損マウスでは複数のマーカー候補分子の発現量が低下していた。これまでの結果を統合すると、CCL28を欠損したマウスでは、唾液腺幹細胞の機能性が低下することで機能的な腺房細胞が産生されず、粘液性唾液量が低下し、唾液腺内への細菌の浸潤が引き起こされたのではないかと考えている。 また、昨年度確立したex vivoでの唾液腺器官培養法を用いて、種々の食品素材が唾液腺(顎下腺)の機能に及ぼす影響を解析した。その結果、醗酵食品素材が漿液性唾液の産生ならびに口腔内への分泌を促進することや、α-アミラーゼの分泌量を増加させ、口腔内細菌叢の多様化に寄与することを見出した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
令和4年度には、令和3年度の結果をさらに裏付けるデータが得られたことに加えて、CCL28が唾液腺幹細胞の機能性や分化制御に関与する可能性を示唆するデータが得られた。また、令和3年度に確立した唾液腺の器官培養法を用いることで、スクリーニングが可能であることが明らかになったことからも、この手法が今後も有用であると考える。以上のことから、「おおむね順調に進展している」と判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
CCL28欠損マウスでは唾液産生の低下が認められたことから、その要因として、①唾液腺幹細胞の分化機構が破綻している、あるいは、②腺房細胞の機能(唾液産生)が低下していることの大きく分けて2つの可能性が考えられる。令和4年度には、CCL28欠損マウスでは、①唾液腺幹細胞の分化機構が破綻している可能性があることを見出した。そこで、最終年度となる令和5年度には、CCL28がもうひとつの可能性として考えられる、腺房細胞の機能性に寄与しているか検討する。
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