2022 Fiscal Year Research-status Report
機械受容チャネルによる動的心筋バイオメカニクス制御機構の解明
Project/Area Number |
21K15338
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Research Institution | Nagoya City University |
Principal Investigator |
山口 陽平 名古屋市立大学, 医薬学総合研究院(医学), 助教 (40831912)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | バイオメカニクス / TRPチャネル / フランク・スターリング機構 / 心筋細胞 |
Outline of Annual Research Achievements |
心臓の収縮・弛緩に伴う伸展や圧力といったメカニカルストレスは、心筋の動的バイオメカニクスを大きく変化させる。しかし、伸展というメカニカルストレスが心筋の収縮力を時空間依存的に制御するメカニズムの全容は未だ明らかではない。本研究では、機械受容チャネルであるTRPC6に着目し、マウス心臓から単離した心筋細胞への伸展負荷実験やマウス生体を用いた容量負荷心臓モデル実験でのTRPC6の欠損による影響を調べることで、急性伸展刺激により心筋で誘発される収縮力増加反応であるフランク・スターリング現象の分子制御メカニズムを解明することを目的としている。令和3年度は、TRPC6が欠損した心筋細胞でFS現象が増強されることを確認し、その機序をより詳細に調べるべく、トランクリプトーム解析を実施した。令和4年度にトランスクリプトーム解析の結果をより詳細に解析したところ、細胞内亜鉛の恒常性維持に関わるタンパク質がその増強に関わっている可能性が示唆された。さらに、TRPC6阻害剤による心筋細胞内の亜鉛濃度の変化を測定したところ、細胞内亜鉛濃度が上昇したため、TRPC6は細胞内亜鉛濃度を調節することでフランク・スターリング現象を間接的に制御していることが示唆された。また、TRPC6の遺伝子欠損マウスで容量負荷心臓モデルを作製し、エコーイメージング技術を用いて調べたところ、個体レベルでも心臓のフランク・スターリング現象が増強されている可能性が示唆された。今後は、フランク・スターリング現象の増強メカニズムをより詳細に調べるため、TRPC6の欠損による細胞内亜鉛濃度への影響やTRPC6が欠損した心筋細胞での収縮タンパク質のリン酸化の程度をウエスタンブロット法で調べる予定である。よって、フランク・スターリング現象の増強メカニズムを亜鉛という観点から明らかにしていく予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
令和4年10月に研究代表者が名古屋市立大学へ異動したことにより、実験設備のスタートアップに時間を要し、令和4年度後半に予定していた実験の一部実施できなかったため。
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Strategy for Future Research Activity |
令和5年度は、TRPC6遺伝子欠損マウスの心筋細胞の細胞内亜鉛濃度を測定し、TRPC6と亜鉛との関連について明らかにする。さらに、亜鉛恒常性の異常が心筋収縮タンパク質のリン酸化を亢進させ、フランク・スターリング機構を増強させている可能性があるため、収縮タンパク質(MLC-2など)のリン酸化の程度をウエスタンブロッティング法で調べる予定である。さらに、亜鉛関連タンパク質とTRPC6との相互作用を明らかにするため、近接ライゲーションアッセイでそれらタンパク質の相互作用について詳細に調べる。また、TRPC6の遺伝子欠損マウスで作製した容量負荷心臓モデル実験が代表者の所属施設の異動に伴い、十分な実験回数を実施できなかったため、実験を追加する予定である。
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Causes of Carryover |
令和4年10月に研究代表者が名古屋市立大学への異動したことにより、実験設備のスタートアップが必要となり、令和4年度の実施予定の研究計画をすべて実施できなかったため。
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[Journal Article] Myocardial TRPC6-mediated Zn2+ influx induces beneficial positive inotropy through β-adrenoceptors2022
Author(s)
Oda Sayaka, Nishiyama Kazuhiro, Furumoto Yuka, Yamaguchi Yohei, Nishimura Akiyuki,Tang Xiaokang,Kato Yuri,Numaga-Tomita Takuro,Kaneko Toshiyuki,Mangmool Supachoke,Kuroda Takuya,Okubo Reishin,Sanbo Makoto,Hirabayashi Masumi,Sato Yoji,Nakagawa Yasuaki,Kuwahara Koichiro,Nagata Ryu,Iribe Gentaro,Mori Yasuo,Nishida Motohiro
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Journal Title
Nature Communications
Volume: 13
Pages: 6374
DOI
Peer Reviewed / Open Access
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[Presentation] マウス心筋細胞で認める高静水圧誘発性緩徐収縮2022
Author(s)
Yohei Yamaguchi, Masayoshi Nishiyama, Hiroaki Kai, Toshiyuki Kaneko, Keiko Kaihara, Gentaro Iribe, Akira Takai, Keiji Naruse, Masatoshi Morimatsu
Organizer
第60回日本生物物理学会年会
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