2021 Fiscal Year Research-status Report
痛みの性差をもたらす痛覚の神経回路メカニズムの解明
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21K15345
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Research Institution | Tokyo Women's Medical University |
Principal Investigator |
金谷 萌子 東京女子医科大学, 医学部, 助教 (00759805)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 疼痛 / 視床 / 性ステロイド / 性差 |
Outline of Annual Research Achievements |
痛みの経路は一般的に、抹消の受容器が痛覚刺激に興奮し、脊髄内でシナプスを替え、対側の脊髄視床路を上行して視床に到達する。脊髄視床路には外側系と内側系があり、外側系は視床から大脳皮質感覚野に投射し、痛みの局在や識別など痛みの「感覚」成分を担っている。今年度は、痛みの感覚成分を構成する経路の中でも、抹消から一次体性感覚野までの中継地点である視床後核からの細胞外電位記録を中心に実験を行った。具体的には、麻酔下においてマウスの視床後核から痛覚応答を細胞外電位記録により計測していき、電極プローブの位置を移動させていくことで視床後核内の痛覚受容細胞のマッピングを行った。痛覚刺激としては、whisker padに対する熱刺激を用いた。視床後核に隣接する触覚シグナルの中継地点である後内側腹側核に対するヒゲ応答を同時に計測することで、脳内の正確な位置を把握した。後内側腹側核においては、内側毛帯線維終末の指標分子である小胞型グルタミン酸トランスポーター(vGluT2)が豊富に観察され、視床後核では比較的少ない。しかし、視床後核の背内側部には限定的にvGluT2の発現が多く認められる小さな領域が局在する。この視床後核内のvGluT2陽性領域と非陽性領域における痛覚受容細胞の分布を比較した。マルチユニット記録の結果ではあるが、両領域間において大きな違いは現在認められていない。また、視床後核内のvGluT2陽性領域の入力元を探索するため、逆行性トレーサーを注入したところ、不確帯や赤核、三叉神経中脳路核で逆行性トレーサー標識細胞が確認されている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
今年度は細胞外電位記録を中心に実験を行ったが、当該技術の習得に時間を要した。また、本研究で着目したvGluT2陽性領域は視床後核内の小さな領域になり、記録電極を正確に刺入する成功率が低く、多くのデータを採取することが困難であった。そのため、雌雄の比較にまで実験を進めること出来なかったため、研究の進捗状況としてはやや遅れていると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度以降は、電気生理学的実験において雌雄の比較を行う。また、雌においては循環性ステロイドの状況による痛覚刺激への応答性の違いを検討するために、性ステロイドホルモンの処置を施した群も作製する。視床後核における細胞特異性が明らかになった後には、入力元と出力先への接続回路に雌雄差があるか否かを検討する。具体的には入力元である三叉神経脊髄路核と、出力先である一次体性感覚野大脳皮質の1層および5a層にAAV投与などを行い組織学的解析を行う予定である。
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Causes of Carryover |
金額の大きい備品購入に関しては、所属研究室の他の研究資金を使用することが可能であったため、30万弱の助成金が繰越となった。次年度においては、電気生理学的実験を多く実施することから、消耗品である電極の購入に充当する予定である。
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Research Products
(1 results)