2021 Fiscal Year Research-status Report
リン脂質排出トランスポーターの活性化による関連疾患治療とリン脂質排出機序の解明
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21K15355
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Research Institution | Kobe Pharmaceutical University |
Principal Investigator |
池田 義人 神戸薬科大学, 薬学部, 助教 (40736980)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 胆汁酸 / リン脂質 / ABCB4 |
Outline of Annual Research Achievements |
胆汁酸は、その界面活性作用により、胆汁鬱滞時に肝細胞の細胞膜リン脂質二分子膜構造に障害を与えることで肝障害を惹起する。健常時、胆汁中に含有されるリン脂質が、胆汁酸と混合ミセルを形成することで、胆汁酸の細胞毒性を軽減する。胆汁中へのリン脂質排出には、肝細胞の毛細胆管膜上に発現しているABCトランスポーターの一種ABCB4が関与している。そのため、ABCB4のリン脂質排出を促進する化合物は、胆汁鬱滞性肝障害の治療に有用であることが期待できる。 これまでに、タウリン抱合型のヒオデオキシコール酸とウルソデオキシコール酸が、ABCB4からのリン脂質排出を促進することを見いだしてきた。そこで、コール酸含有食を摂餌させることで胆汁鬱滞性肝障害を示したマウスに、タウリン抱合型のヒオデオキシコール酸とウルソデオキシコール酸を投与した。その結果、肝障害マーカーとして評価したAST、ALTの低下、すなわち胆汁鬱滞性肝障害の改善がみられた。一方、胆汁中リン脂質と胆汁酸の存在比にはわずかな増加傾向しかみられなかった。タウリン抱合型のヒオデオキシコール酸やウルソデオキシコール酸の胆汁鬱滞性肝障害モデルマウスへの投与が及ぼす影響を詳細に評価するため、肝組織の繊維化や胆汁中の胆汁酸組成比を評価するための条件検討を終えた。 また、ABCB4のリン脂質排出機序を分子レベルで解明するために、ABCB4変異体発現細胞株を4種作出した。そのうち2種のABCB4変異体は、リン脂質排出活性が顕著に減少しており、今後はその原因を追及する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では、胆汁鬱滞性肝障害モデルマウスの作出と化合物の投与期間が最も時間を要するが、統計処理に必要な匹数の処置を概ね終えることができた。また、回収した血液や肝組織、胆汁の検体を順次評価することで、胆汁鬱滞性肝障害の治療にABCB4のリン脂質排出活性化が有用であることを示す結果が得られつつある。
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Strategy for Future Research Activity |
タウリン抱合型のヒオデオキシコール酸やウルソデオキシコール酸の胆汁鬱滞性肝障害モデルマウスへの投与が、肝組織の繊維化や胆汁中の胆汁酸組成比に与える影響を評価する。また、ABCB4変異体発現培養細胞を用いて、リン脂質排出機序の分子レベルでの解明を試みる。
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Causes of Carryover |
実験計画が比較的順調に進み、試薬の新規購入がなくても実験を進めることができたため。 次年度以降には肝組織や培養細胞の顕微鏡観察を行う。大学の共同機器の使用を計画していたが、故障により新規に購入する必要が生じた。そのため、当初の計画にはなかった顕微鏡の購入に必要な経費を計上する。
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Research Products
(1 results)