2023 Fiscal Year Annual Research Report
ES細胞・iPS細胞の機能制御を可能とする新規荷電性培養基板の開発
Project/Area Number |
21K15357
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
廣田 聡 京都大学, 高等研究院, 特定研究員 (20847181)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | ハイドロゲル / 幹細胞 |
Outline of Annual Research Achievements |
ES細胞やiPS細胞などの高度な多能性を持つ幹細胞は再生医療の基盤資源である。しかし、その維持や分化誘導は多種類の増殖因子を必要とし、高いコストや再現性、効率に課題が残されている。この問題を解決するため、本研究では従来にない視点で、新規培養基板を開発する。本研究では、表面電荷の制御可能な合成ハイドロゲルを用いて、ES/iPS細胞の幹細胞性や分化制御が可能な革新的培養基板を創出を目指す。すでに、申請者はマウスES細胞において、未分化細胞と分化細胞では維持・増殖・分化に適した足場の電荷が異なることを見出している。また、NGSを用いた遺伝子プロファイルの解析により、正電荷をもつ合成ハイドロゲル上で分化誘導をおこなった際に分化抵抗性を示した細胞は、Epiblast stem cells (EpiSCs)のようなPrimed型ではなく、むしろ未分化能の高いNaive型ES細胞に近い遺伝子発現プロファイルを示していた。より詳細に遺伝子発現パターンの変化を解析すると、正電荷ゲル上で分化誘導を行った細胞では、未分化維持に関わるKlf4、Klf2、Klf5の発現量が維持されており、阻害剤による検討から、上流シグナルとしてERK5経路の関与が示唆された。ヒト細胞へ適用するため、ヒト多能性幹細胞(Naive, Primed)の培養基板として用いたところ、各状態に最適な合成ハイドロゲルの組成と培地の条件の組み合わせを絞り込むことができたが、機能を制御する培養基板とするには課題も残された。また、ヒトがん幹細胞における荷電性ハイドロゲルの効果を検証したが、先行研究と同様に、ハイドロゲル上で培養したがん細胞では、がん幹細胞マーカー(SOX2, OCT3/4など)の発現量が上昇した。したがって、本課題の一連の結果から得られた体系的な理解により、幹細胞性を制御する新たなバイオマテリアルの創出実現へ近づいた。
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