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2021 Fiscal Year Research-status Report

Analysis of polysulfide-dependent mitochondrial function in hematopoietic stem cells

Research Project

Project/Area Number 21K15358
Research InstitutionTohoku University

Principal Investigator

村上 昌平  東北大学, 加齢医学研究所, 助教 (20746911)

Project Period (FY) 2021-04-01 – 2023-03-31
Keywordsポリスルフィド / 造血幹細胞 / ミトコンドリア
Outline of Annual Research Achievements

本研究では、ミトコンドリア内においてシステインパースルフィド(CysSSH)を産生できなくなるCARS2変異(Cars2 IKO)マウスを用いて、造血幹細胞におけるCysSSHに起因するポリスフィドの役割について解析している。
まず、Cars2 IKOマウスの骨髄細胞を解析したところ、アポトーシスの亢進と共に造血幹細胞が減少しており、赤血球細胞への分化が著しく障害されていることがわかった。そこで、造血幹細胞の競合的連続移植実験を行った結果、Cars2 IKOマウスの造血幹細胞は骨髄ニッチ非依存的、つまり、細胞自律的に幹細胞性を消失していることがわかった。次に、この造血幹細胞のミトコンドリア機能を調べたところ、膜電位の消失と活性酸素種の蓄積が観察された。また、これらミトコンドリア機能障害は全骨髄細胞においても観察され、さらにADP/ATP比および酸素消費量を調べると、Cars2 IKOの骨髄細胞ではADP/ATP比の上昇および酸素消費の低下が観察された。以上のことから、Cars2 IKOマウスで観察される造血幹細胞の機能異常はミトコンドリア機能不全が原因であることが示唆された。
一方、質量分析装置を用いて、細胞内に遊離したシステイン(CysSH)、CysSSH、その他硫黄代謝物を調べたところ、Cars2 IKOマウスの骨髄細胞では予想と反し、CysSHとCysSSHは減少していないことがわかった。Cars2はシステニル-tRNA合成活性を持ち、タンパク質の翻訳と同時にCysSHをCysSSHに変化し、タンパク質のCysSH残基をパースルフィド化することが知られている。ゆえに、上記で観察されたCars2 IKOでの造血幹細胞の機能不全はタンパク質のCysSH残基のパースルフィド化不全が原因であると考えられる。
今後は、より詳細な分子機能の解明を目指す。

Current Status of Research Progress
Current Status of Research Progress

2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.

Reason

今年度予定していたCars2 IKOマウスにおける造血幹細胞の機能評価は、競合的連続移植実験を含め、ほぼ完了しており、Cars2変異よって造血幹細胞の幹細胞性が消失することを明らかにできた。造血幹細胞の実験において、連続移植による造血幹細胞の機能性評価が最も時間を要し、かつ、不可欠な実験である。本実験を終了し、幹細胞性の評価が終了したことは本研究に置いて大きな進展である。
また、この造血幹細胞の機能不全の原因として考えられるミトコンドリア機能の評価もほぼ完了しており、エネルギー産生能が顕著に低下していることがわかった。今後はCars2変異による呼吸鎖複合体タンパク質への影響など、分子レベルでの解析をすることでより詳細な分子機構を明らかにできると考えられる。
一方、当初減少すると予想されていた、細胞内遊離CysSSHは予想に反し、減少していなかった。しかしながら、この結果と一致して、予備実験的にポリスルフィドを補うためにグルタチオントリスルフィド(GSSSG)をマウスに投与しても、造血幹細胞の表現型は改善しなかった。Cars2がタンパク質のCysSH残基をパースルフィド化することが考えると、今後はミトコンドリアにコードされるタンパク質のCysSH残基のパースルフィド化を測定する必要があると考えられる。
以上から、今年度予定していた実験はほぼ完了しており、進捗状況は良好であると考えられる。

Strategy for Future Research Activity

今後は、まずミトコンドリア呼吸鎖複合体機能を評価するため、各呼吸鎖複合体のタンパク質が正常に複合体を形成しているかどうかを検討する。その他、ミトコンドリアの機能障害の原因としては、permeability transition pore(PTP)の開口やフェロトーシスが考えられるため、これらが造血幹細胞の機能障害に関連しているかどうか検討する。また、その分子レベルでの評価として、ミトコンドリア内タンパク質におけるCysSH残基のパースルフィド化を評価する。
一方、ミトコンドリアは鉄-硫黄クラスター形成場であり、その過程にはNFS1のCysSHがパースルフィド化されること、またミトコンドリア呼吸鎖複合体I-IIIには鉄-硫黄クラスターが不可欠であることから、Cars2変異は鉄-硫黄クラスターの形成・維持不全を誘導することで、ミトコンドリアの機能不全を誘導している可能性がある。そこで、骨髄細胞中の鉄-硫黄クラスターについても検討する。
最後に、Cars2変異による影響がCysSSHの合成活性の消失であることを示すために、CysSSH合成活性を保持したままで、システニル-tRNA合成活性が消失したCars2を発現するTgマウスとCars2 IKOマウスを交配し、Cars2 IKO::Tgマウスを作成し、Cars2 IKOマウスで観察された造血幹細胞の異常が改善するかどうか検討する。
以上により、Cars2変異による造血幹細胞の機能異常の原因となる分子機序を明らかにしつつ、造血幹細胞におけるミトコンドリア内ポリスルフィドの役割を明らかにする。

Causes of Carryover

本年度はフローサイトメトリー解析が中心であったため、研究室にすでにあった試薬や抗体等を使用することで、多くの実験を遂行することができた。しかしながら、次年度分については新たに試薬や抗体等を購入する必要がある。また次年度では、Cars2変異状態誘導のために不可欠なTamoxifenを新たに大量購入する必要がある。さらに、次年度に計画しているミトコンドリア内での分子機序の解明のために、新たな試薬や検出キットの購入が必要である。
本年度はコロナウィルスに影響で、ほぼ全ての学会・シンポジウムがwebでの開催になったため、旅費については次年度への持ち越しとなったが、次年度では学会・シンポジウム参加のための旅費が必要になると予想される。

  • Research Products

    (5 results)

All 2022 2021

All Presentation (5 results) (of which Invited: 1 results)

  • [Presentation] 造血細胞分化・維持制御における超硫黄分子の役割2022

    • Author(s)
      村上昌平
    • Organizer
      第21回分子予防環境医学研究会大会
  • [Presentation] Physiological function of polysulfides produced by mitochondria-localized Cars22021

    • Author(s)
      村上昌平
    • Organizer
      JST-CREST多細胞領域 第8回Rising Star Webinar
    • Invited
  • [Presentation] 造血幹細胞における超硫黄分子の役割2021

    • Author(s)
      村上昌平
    • Organizer
      生理研研究会2021
  • [Presentation] 造血幹細胞における超硫黄分子の役割2021

    • Author(s)
      村上昌平
    • Organizer
      第94回生化学大会
  • [Presentation] 造血幹細胞における超硫黄分子の役割2021

    • Author(s)
      村上昌平
    • Organizer
      日本生化学会東北支部 第87回例会・シンポジウム

URL: 

Published: 2022-12-28  

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