2022 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
21K15372
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
吉永 正憲 京都大学, 医学研究科, 助教 (70878347)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | RNA修飾 / 赤芽球分化 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は新規N6-methyladenosine(m6A)RNA修飾機構が赤芽球分化において果たす役割の解明を目的としている。昨年度の解析により、METTL16欠損赤芽球においてDNA損傷のマーカーである微小核が高頻度に観察され、DNA修復に関与する遺伝子の発現が著明に低下していることを見出した。そこで本年度は、DNA損傷の寄与についてより詳細に検討することにした。まずMETTL16欠損赤芽球においてDNA損傷を定量的に評価できるコメットアッセイを行い、これらの細胞においてDNA損傷が有意に増加していることを確認した。次に、METTL16欠損赤芽球においてRNA-seqを行ったところ、インターフェロン誘導性遺伝子(ISGs)の発現が増加していることを見出した。そこで次に、DNA損傷を認識しIFNの産生を誘導する自然免疫経路であるcGAS-STING経路の関与を検討するため、STINGおよびI型IFN受容体の欠損マウスと赤芽球特異的METTL16欠損マウスを交配させ、これらの二重欠損により赤芽球分化障害が改善するか検討した。この結果、STINGもしくはI型IFN受容体を欠損させてもMETTL16欠損赤芽球の分化異常は改善しないことが明らかになった。他方、METTL16欠損細胞ではcaspase-3の活性化や、caspaseにより分解を受けるGATA1の発現低下がみとめられたことから、METTL16欠損下でのDNA損傷はcaspaseの活性化を誘導することで赤芽球分化を阻害していることが示唆された。以上のことから、METTL16はDNA修復に関する遺伝子の発現を正に調節することで、ゲノム安定性を維持し赤芽球分化を可能にする因子であることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
赤芽球特異的METTL16欠損マウスを解析し、METTL16を欠損した赤芽球におけるDNA損傷が赤芽球分化を阻害するメカニズムを詳細に明らかにすることができた。またこれまでの研究成果をまとめ、赤芽球におけるMETTL16の機能について英文学術誌に報告した(Yoshinaga et al., Nat Commun. 2022)。このように、本研究はおおむね順調に進展していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は生体でのMETTL16欠損により引き起こされる機能異常について、DNA損傷や分化障害の観点からより多角的に解析を進める予定である。
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Causes of Carryover |
当初の計画を変更し、本年度に予定していた国際学会参加を次年度に計画しているため次年度使用額が生じたが、次年度早期に使用する予定となっているため全体の使用計画に大きな変更はない。
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Research Products
(10 results)