2021 Fiscal Year Research-status Report
子宮平滑筋肉腫におけるATRX発現とその機能及び分子機構の解明
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21K15389
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Research Institution | Nara Medical University |
Principal Investigator |
内山 智子 奈良県立医科大学, 医学部, 助教 (80745448)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | leiomyosarcoma / ATRX / microRNA |
Outline of Annual Research Achievements |
申請書の実験計画(1.FFPEを用いたATRXタンパク・mRNA・miRNA発現の検討、2.テロメア特異的FISH法によるALTの検討、3.子宮平滑筋肉腫細胞を用いた、ATRX発現解析及び分子生物学的機能解析、4.miRNA発現とATRX mRNA発現に与える影響の検証)に基づき、1.で使用したFFPE検体の子宮平滑筋肉腫(LMS)臨床病理像の解析と免疫染色(IHC)における検討を行った。IHCにおける検討では、IHC結果をそれぞれ2群に分類、Kaplan-Meyer法を用いて予後比較を行った。さらに平滑筋腫とのIHC結果の違いについて解析した。またFFPEから核酸を抽出し、NGSを用いた解析を行った。ATRXについてはプライマーをいくつかデザインし、RT-PCR法にて発現を検討した結果、変異の有無を詳細に検討するためには全エクソン解析が有用と考え、NGSにて全エクソン解析を行うためにカスタマイズした。NGSによる解析では、TP53 (55%)・RB1 (40%)・PTEN (35%)等, 癌抑制遺伝子のコピー数loss/変異が多く検出され, 既報と同様の結果であった。またIHCにおけるp53の過剰発現,p16の過剰発現とKi-67 indexの高値は悪性を示唆する指標の1つとなると考えられたが, LMSではCDKN2Aコピー数lossとなる症例もあり, それらはIHCにてp16陰性の可能性があること、またIHCにおけるATRX発現消失やMTAP発現消失は, 悪性を示唆する指標の1つとなる可能性があることを見いだした。 以上の研究成果について学会発表を行った。現在は申請書に基づく更なる実験計画及び学会発表、論文作成を行っている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
「研究実績の概要」に記したLMS臨床病理像の解析とIHCにおける検討に加え、申請書の実験計画に基づき、現在までに、FFPEを用いたATRXタンパクとmRNA、miRNA発現の検討を行った。臨床病理像の解析のほか、子宮平滑筋肉腫切除検体のFFPEを用いて、ATRXタンパク発現について免疫染色で検討した。また、病変部をダイセクションし、ATRX mRNAを抽出した後、リアルタイムRT-PCR法で、発現量を検討した。次に、in silicoでATRXと相補性を有するmiRNAを探索し、これら数種類(25-3p, 92a, 367)についてプライマーをデザインし、miRNAをFFPEから抽出し、発現量を検討した。ATRXについては、検討した24例のうち半数以上で発現を認めず、核酸の断片化の影響が考えられた。そこでNGSでの解析を行うため、ATRX全エクソン解析のためのカスタムパネルを作成し、解析を行ったところ、10検体でAll Exon解析を行うことができ、7検体でアミノ酸置換を伴う変異を認めた。miR-25-3p, 92aはほぼすべての検体で発現を認め、SK-UT-1においてATRXの発現を抑制するsiRNAを導入したところmiR-25-3p, miR-92aいずれも発現の抑制が認められた(発現の機序については検討中)。現在は、ULMS細胞株(SK-UT-1,SK-LMS-1,SKN)を用いて、それぞれの細胞株におけるATRXおよびmiRNAの発現を中心に解析している。 以上は申請書に記載した研究計画に基づいた研究の進行であり、また研究成果に基づいて学会発表を行った。以上より、進歩状況について(2)おおむね順調に進展している、と報告する。
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Strategy for Future Research Activity |
今後について、申請書に記載した研究計画に基づき引き続き研究を進める予定である。計画書3.子宮平滑筋肉腫細胞を用いた、ATRX発現解析及び分子生物学的機能解析及び計画書4.miRNA発現とATRX mRNA発現に与える影響の検証である。3について、すでに子宮平滑筋肉腫細胞株(SK-UT-1)を用いて、ATRX(タンパク及びmRNA)発現解析及び数種類のmiRNAについて発現解析を行った。以下の実験計画(増幅し得た範囲の塩基配列についてNGSにより変異解析を行う。また、細胞増殖、浸潤能の機序について細胞周期(FCMによる細胞周期解析)、アポトーシス(アネキシンV測定およびTdT-mediated dUTP nick end labeling assay)、オートファジー(LC3及びp62タンパク発現解析.ウエスタンブロット法)、浸潤アッセイ(マトリゲルアッセイ)など網羅的に解析し、ATRX発現との関連性を見いだす。)について行う予定である。発現しているmiRNAについて、ATRX mRNA発現との関連性を確認し、関連性が見いだせる場合には、4の実験を行う。関連性が見いだせない場合には、発現したmiRNAと、当該miRNAがターゲットとし平滑筋肉腫で変異を起こしうるATRX以外の遺伝子mRNAとの関連性について検証する。候補miRNAについて、mimic(合成品)あるいはinhibitorを細胞に導入し同様の条件で培養した後、ATRX mRNA発現の有無や発現量についてRT-PCR法で測定し、miRNAの機能を確認・検証する。子宮平滑筋肉腫細胞株の種類は多くないため、場合によってはその他の肉腫由来細胞(ATRX変異の報告されている骨肉腫など)でも同様の実験を行う。 以上について研究を行い、研究成果について学会発表及び論文作成を行う予定である。
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Research Products
(12 results)