2021 Fiscal Year Research-status Report
The Role of AhR in carcinogenesis from inflammatory bowel disease and its usefulness as a novel tumor marker.
Project/Area Number |
21K15400
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Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
的場 久典 信州大学, 医学部, 特任助教 (10849277)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | AhR / CAD / CAC / p53 / Ki-67 / SATB2 / DNAメチル化 |
Outline of Annual Research Achievements |
Colitis associated dysplasia(CAD)およびcolitis associated carcinoma(CAC)に対するAryl hydrocarbon receptor(AhR)の診断マーカーとしての意義を明らかにするために、信州大学医学部附属病院のCAD19例、CAC4例に対してAhRの免疫染色を行った。また、CAD, CACの診断マーカーとされているSATB2, Ki-67, p53の免疫染色も同時に行い、結果を比較した。 CAD19例中でAhRの発現上昇は14例、SATB2の発現低下は10例、Ki-67の陽性細胞の増加は7例、p53の陽性所見は6例に認めた。CADのうちいわゆるconventional adenoma-likeの成分が主体の例ではAhRの発現上昇は8例中7例に認めたが、terminally differentiatedなどの他の成分を含む例では10例中6例にとどまった。またCAC4例中でAhRの発現上昇は3例、SATB2の発現低下は4例、Ki-67の陽性細胞の増加は2例、p53の陽性所見は3例に認めた。全体としてはAhRがCAD, CACの診断マーカーとなりうることを示唆する結果ではあるが、AhRの免疫染色については強度が不十分な面があり、現在染色条件などについて検討中である。 また、大腸癌細胞株であるDLD-1, HCT-116から抽出したゲノムDNAを用いて、バイサルファイトシークエンス法によるAhRプロモーター領域のメチル化解析を行った。DLD-1ゲノム中の5か所、HCT-116ゲノム中の7か所のCG配列中のシトシン残基においてメチル化は認めなかった。上記のCAD19例、CAC4例のパラフィン切片を用いて、病変部および背景大腸粘膜のそれぞれからゲノム抽出を行い、AhRプロモーター領域のメチル化について解析準備中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
AhRがCAD, CACに対する診断マーカーとなりうることを示唆する結果が得られ、またメチル化解析に関してもバイサルファイトシークエンス法による解析手法を確立し、解析対象の症例からのゲノムDNAの抽出も行うことができた。今年度はコロナ禍のため他施設のとの連携による多数症例の解析が困難ではあったものの、十分な進展が得られたものと考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、多施設共同研究によりCAD, CACの症例数を確保したうえで、上記診断マーカーの免疫染色の結果を補強し、マーカーごとのCADのタイプ別の陽性/陰性の傾向なども調査したうえで、AhRの診断マーカーとしての特性を他のマーカーとの比較により明らかにしたい。また特にAhRの発現上昇を伴わないCAD, CACの例に関して、バイサルファイトシークエンス法によりAhRの発現低下とプロモーター領域のメチル化との関連について解析したい。CAD, CACの発生とAhRの発現との関連については、AhR KOマウスを用いた先行研究((Matoba et al., Am J Pathol., 190, 453-468 (2020))において盲腸の病変の発生とMAPK経路の活性化との関連を示唆する結果が得られているため、ヒトのCAD, CACにおける同様の関連性、すなわちAhRの発現低下を示すCAD, CACの例におけるMAPK経路の活性化について、免疫染色などを用いて解析を行う予定である。
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Causes of Carryover |
研究そのものは順調に進展しており、当初と予定を変更してメチル化解析の検討などを先行して行ってはいるが、次年度使用額が生じた主な理由は、コロナ禍により他施設との連携による多数症例の解析が困難になり、検討する症例数が予定を下回ったためと考えられる。次年度使用額については、多数症例の解析に必要な抗体などの試薬約50万円分をこれを用いて購入する予定である。また、また翌年度分については、計画のとおりにCAD, CACの例のゲノムDNAを用いたエクソーム解析などに用いる予定である。
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