2021 Fiscal Year Research-status Report
被膜のない甲状腺濾胞性病変の意義:結節内結節病変に着目した分子病理学的解析
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21K15402
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Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
黒濱 大和 長崎大学, 病院(医学系), 助教 (20648109)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 53BP1 |
Outline of Annual Research Achievements |
症例の集積:被膜のない結節内結節を有する甲状腺濾胞性結節(12例)を収集した。比較対照として従来型の濾胞腺腫(30例)および結節性甲状腺腫(27例)を収集した。 蛍光抗体法による53BP1およびKi-67の発現検討:結節内結節を有する甲状腺濾胞性結節(12例)における異常型53BP1発現の頻度は、濾胞腺腫(30例)や結節性甲状腺腫(27例)などの従来の甲状腺結節よりも有意に高かった。53BP1異常発現の頻度は大濾胞領域よりも小濾胞もしくは充実性領域で有意に高かった。結節内結節病変の外側の結節と内側の結節を比較すると、Ki-67陽性かつ53BP1発現細胞の比率は、内側の結節で有意に高かった。被膜の有無は53BP1発現異常の発生率に有意な関連はなかった。 サンガーシークエンスによるRAS変異解析:結節内結節病変の内側の結節では、外側の結節と比較して高頻度にNRASエクソン3変異が認められた。HRASエクソン2変異は結節内結節病変および腺腫様甲状腺腫にも認められた。 まとめ:結節内結節を有する甲状腺濾胞結節では、内側の結節と外側の結節においてRAS遺伝子発現に違いがみられた。また本研究ではRAS変異の有無と同様に、異常型53BP1発現の特徴的な分布が示され、腫瘍の悪性度やゲノム不安定性を推定する指標となる可能性が示された。甲状腺濾胞性病変では被膜の有無にかかわらず腫瘍性変化が存在することが示唆される。次世代シーケンサーを用いた複数遺伝子解析の裏付けを計画し研究を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
次世代シーケンサーによる遺伝子解析を2021年度に予定していたが、解析する遺伝子パネルの選定等に時間を要し2022年度に遅延することとなった。
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Strategy for Future Research Activity |
結節内結節の外側の結節および内側の結節、および従来型の濾胞腺腫や腺腫様甲状腺腫との遺伝子発現の差異を検討するため、次世代シークエンサーによりRAS以外の複数の遺伝子パネル解析を計画している。
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Causes of Carryover |
2021年度に計画していた次世代シーケンサーを用いた遺伝子解析について、検討する遺伝子パネルの選定等に時間を要したことと、2021年度はコロナ禍の影響で学会が中止になったりして参加できなかったことにより次年度使用額が生じた。2022年度には2021年度に計画していた次世代シーケンサーを用いた遺伝子解析を行い、また参加できなかった学会参加を行う予定であり、これらに助成金を使用予定である。
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