2022 Fiscal Year Research-status Report
被膜のない甲状腺濾胞性病変の意義:結節内結節病変に着目した分子病理学的解析
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21K15402
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Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
黒濱 大和 長崎大学, 病院(医学系), 助教 (20648109)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 甲状腺 / 結節内結節 |
Outline of Annual Research Achievements |
症例の集積:低分化型の結節内結節を有する被膜のない甲状腺濾胞性結節(Thyroid follicular-patterned tumor with nodule in nodule appearance; TFT-NN)(16例)を収集した。比較対照として濾胞腺腫(30例)、結節性甲状腺腫(31例)、微少浸潤型濾胞癌(15例)、広範浸潤型濾胞癌(11例)を収集した。 蛍光抗体法による53BP1およびKi-67の発現検討:TFT-NNの低分化結節成分での異常型53BP1発現およびKi-67の発現頻度は、濾胞腺腫や結節性甲状腺腫よりも有意に高く、濾胞癌と同程度であった。またTFT-NNの低分化結節成分では、53BP1異常発現とKi-67の共発現率はそれ以外の領域に比較して有意に高かった。 RAS変異解析、TERTプロモーター変異解析:TFT-NNの低分化結節成分では、高頻度にNRASエクソン3変異が認められた。またTERT-p変異の発生率はFCと同程度であった。 まとめ:TFT-NNにみられる低分化結節成分は、被膜形成および浸潤像といった濾胞癌の特徴を欠いているものの細胞生物学的には悪性化の可能性が示唆される。異常型53BP1とKi-67の共発現はゲノム不安定性を推定する指標であり、TFT-NNにおける低分化結節成分の発生は、NRASおよびTERT-p変異を保有した後のDNA損傷修復障害と関連している可能性がある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
次世代シーケンサーによる遺伝子解析を2021~2022年度に予定していたが、解析する遺伝子パネルの選定等に時間を要し2023年度に遅延することとなった。
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Strategy for Future Research Activity |
結節内結節の外側の結節および内側の結節、および従来型の濾胞腺腫や腺腫様甲状腺腫との遺伝子発現の差異を検討するため、次世代シークエンサーによりRAS以外の複数の遺伝子パネル解析を計画している。
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Causes of Carryover |
2021-2022年度に計画していた次世代シーケンサーを用いた遺伝子解析について、検討する遺伝子パネルの選定等に時間を要したことと、2021-2022年度はコロナ禍の影響で学会が中止になったりして参加できなかったことにより次年度使用額が生じた。2023年度には2021-2022年度に計画していた次世代シーケンサーを用いた遺伝子解析を行い、また参加できなかった学会参加を行う予定であり、これらに助成金を使用予定である。
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