2022 Fiscal Year Research-status Report
血小板由来増殖因子による脳および髄膜のリモデリング
Project/Area Number |
21K15415
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Research Institution | University of Toyama |
Principal Investigator |
濱島 丈 富山大学, 学術研究部医学系, 助教 (80467092)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 血小板由来増殖因子受容体 / 稀突起膠細胞 / 髄膜 / 血管新生 |
Outline of Annual Research Achievements |
脳血管障害は、日本人の死亡原因の上位を占め、死亡率や後遺症の残存率は依然として高く、予後の改善は喫緊の課題である。本研究課題では、稀突起膠細胞(OL)に注目した全く新しい観点から、脳血管を再生し、脳実質内の失われた血流と細胞の回復を図る機構を明らかにする。これによって、髄膜からの組織、細胞の動員を介して脳血管障害の予後の改善を目的とする創薬あるいは治療法開発の手がかりを得ようとするものである。 本研究課題の目的は血小板由来増殖因子受容体α(Pdgfra)遺伝子の条件的ノックアウトマウス (N-PRα-KO)で見られたOL系譜細胞の異常を起点とする過剰な血管新生の機序と、これに密接に関連して動員されるPDGFRα陽性の間質細胞様細胞(PRα+PSC)の機能的意義の解明である。 2021年度は、N-PRα-KOにみられた新生血管に対して血管径の計測に加え、脳皮質を透明化し、三次元的な血管構築について解析を行った。これにより、NPRα-KOでは、wild type と比較して、より不規則で、蛇行を伴った血管が形成されていることを明らかにした。2022年度は血管構築をより詳細に観察するために、既存のN-PRα-KOとFlt1下流でtdsRed を発現するマウスを交配し、N-PRα-KOの血管をtdsRedにて標識した。生後早期についてシングルセルRNA-seq解析を行った。第112回日本病理学会総会にて上記の成果の口演を行った。 次年度は血管構築の定量化をさらに進める。血管の解析を経時的に行い、シングルセルRNA-seq解析による網羅的遺伝子発現の分析を進め、OL前駆細胞(OPC)の有無が血管新生因子にもたらす変化について検討する。新たに得た知見について免疫組織化学的手法により組織の解析を行う。OPCの不在が血管新生とその後の組織変化に与える影響についてまとめ、成果の発表を行う。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2022年度においては、既存のN-PRα-KO とFlt1 下流で tdsRed を発現するマウスを交配し、N-PRα-KO の血管を tdsRed にて標識することが可能となった。これによって従来 CD31 染色では評価困難となっていた血管構築をより詳細に観察可能となった。また脳全体においては N-PRα-KO の血管新生因子として知られる Vegfd の発現とその受容体Flt1, Flk1, 他に同じく血管新生に関与する Bsg が N-PRα-KO において増加していることを特定した。生後15日目のシングルセルRNA-seq解析の予備データでは、KO由来の血管内皮細胞においてこれらの遺伝子のうちBsg の発現が増加しており、血管新生促進に強く関わっていることが示唆される。また、先端バイオイメージング支援プラットフォームとコラボレーションも継続中で、これらの差の定量化を進めている。
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Strategy for Future Research Activity |
2023年度の予定としては、主にシングルセルRNA-seq解析で新たに得た知見を免疫組織化学的手法により組織所見に還元する。さらに、同血管の性質( 脳血液関門等を含む、脆弱性の有無、血管新生の有無による組織再生の差)等について組織学的な検討を実施する。現時点では、異常血管の過剰が組織再生を阻むものであることを想定しており、シングルセルRNA-seq解析の所見と組織化学的所見を併せて、血管新生の抑制実験を行い、組織再生について検証する。OPC の不在が血管新生と、その後の組織変化に与える影響についてまとめ、成果の発表を行う。
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