2022 Fiscal Year Research-status Report
COL6欠損によるウルリッヒ型筋ジストロフィーの病態発生のメカニズム解明研究
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21K15418
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
竹中 菜々 京都大学, iPS細胞研究所, 特定研究員 (20792849)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | iPS細胞 / 6型コラーゲン / ウルリッヒ型筋ジストロフィー / 病態メカニズム / プロテオミクス解析 |
Outline of Annual Research Achievements |
6型コラーゲン(COL6)の欠損はウルリッヒ型先天性筋ジストロフィー (UCMD)等の筋疾患の原因となる事が分かっている。しかしながら、UCMDに対する有効な治療法は無く、病態メカニズムも分かっていない。申請者はこれまで、UCMDモデルマウスに対し、健常者由来ヒトiPS細胞から作製されたMSC (iMSC)の移植実験を実施し、生着したiMSCによりCOL6が補充された領域において、再生筋の成熟が促進される事を確認した。さらに、COL6A1ノックアウト(KO)-iPS細胞から作製したMSC(KO-iMSC)の移植実験では、成熟化促進作用が確認されなかったため、これらの効果はiMSCにより分泌されたCOL6を介したものであると証明した。さらに、iMSCとKO-iMSCを用いてin vitroでの比較検証を行った結果、iMSCから産生されるCOL6が、筋幹細胞の増殖・分化および筋管の成熟に関連した遺伝子群の発現を上昇させる働きを持つ事を明らかにした。しかしながら、細胞外に存在するCOL6がどのようにして筋細胞膜の内側にシグナルを伝えているのかは不明である。そこで本研究では、COL6が関与するシグナル伝達系の全貌を明らかにするために、プロテオーム解析により候補分子を探索し、ノックダウン(KD)実験により責任分子の同定を目指す。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当該研究では、3つの網羅的解析(①RNA-seq解析、②リン酸化プロテオーム解析、③網羅的結合タンパク解析)により、COL6レセプター候補分子と、その上流下流のシグナル伝達系を絞り込み、その後、それらの候補分子の検証実験を実施する。 2021年度 ⇒候補分子の絞り込みを目的とした3つの網羅的解析実験のうち、リン酸化プロテオーム解析と、網羅的結合タンパク解析を実施した。 2022年度⇒ビッグデータ解析を専門とする研究者との共同研究を開始した。2021年度に実施した二つの網羅的解析を統合的に解析し、COL6レセプター分子候補と、その下流のシグナルカスケードの絞り込みを進めている。 さらに、候補分子の絞り込みが完了した後に実施する検証実験に向け、primary骨格筋幹細胞に対する効率的なKD方法確立を目指した実験を開始した。UCMDモデルマウスから採取したprimary筋幹細胞に対して、CRISPR-OFFシステムやsiRNA導入による効率的なKDを目指して実験条件の至適化を進めた。KD方法が確立した後、iMSCとの共培養実験を進め、COL6が筋細胞の再生・成熟化促進に関わるためのレセプターとシグナル伝達系を明らかとする。
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Strategy for Future Research Activity |
①RNA-seq解析:UCMDモデルに由来する筋幹細胞を、iMSCかKO-iMSCそれぞれと共培養し、それぞれの筋幹細胞で発現している遺伝子群を比較し、iMSCとの共培養時(COL6の存在下)に高く発現している遺伝子群をピックアップする。2021年度に実施した③網羅的結合タンパク解析で絞り込まれたの候補群の中でも、①と②の網羅的解析で高い発現が見られた下流シグナル経路と関連性の高いレセプタータンパクが、COL6レセプター候補分子として絞り込まれる。 ②2022年度に引き続き、UCMDモデルマウス由来primary骨格筋幹細胞に対する効率の良いKD方法を確立させた後、その方法を用いた検証実験を開始する。検証実験では、まず、3つの網羅的解析によって絞り込まれたレセプター候補分子について、KDが効率よく実施されることを確認する。さらにその実験と並行して、候補分子をHEK293Tに強制発現させ、COL6添加で下流シグナルの増強効果が認められるかを確認する実験も計画している。 その後、絞り込まれた候補分子が、実際に骨格筋再生・成熟化促進に関連したCOL6のシグナル伝達に関与しているかどうかを検証する実験を実施する。具体的には、ターゲット分子をKDしたUCMDモデルマウス由来primary骨格筋幹細胞と、iMSCの共培養実験を介して検証する。候補分子をフェーズごとにわけてKDした条件と、KDしない条件とで比較することでその分子の作用を時期特異的に解明することができる。
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Causes of Carryover |
コロナウイルス感染症対策の一環として、学会や共同研究者とのミーティングを主にオンラインで実施することが多くなりました。その結果、旅費の使用額が予定額よりも大幅に減少し、余剰金が発生してしまいました。しかしながら、2023年度には多くの学会がオンサイトでの開催に戻ることが予測されます。このため、当該助成金は旅費に充てられる予定です。
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