2021 Fiscal Year Research-status Report
PP6ホスファターゼの活性低下は、がん発生のスイッチとなるーマウス発がん実験
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21K15425
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Research Institution | Miyagi Prefectural Hospital Organization Miyagi Cancer Center |
Principal Investigator |
金澤 孝祐 地方独立行政法人宮城県立病院機構宮城県立がんセンター(研究所), がん薬物療法研究部, 共同研究員 (60898279)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | マウス膵癌モデル / 悪液質 / KRAS / がん抑制遺伝子 |
Outline of Annual Research Achievements |
KRAS遺伝子変異は様々ながんに見出されているが、変異型KRASを標的とする治療開発は困難を極めている。申請者は、これまでに、PP6ホスファターゼ(PP6)が変異型KRASの腫瘍形成能を抑える機能をもつことを、マウス皮膚・頭頸部発がん実験で明らかにしてきた。 では、この現象が皮膚・舌の扁平上皮だけなのか?という疑問が生じた。難治がんである膵臓がん(膵管腺がん/PDAC)は90%以上がKRAS変異をもつ。もし、PP6が膵がんにおいても、変異型KRAS依存性の腫瘍形成を抑える機能があれば、PP6を利用した膵がん治療法開発の可能性があると考え、本研究を企画した。 ヒトPDACでは、KRAS変異をもつ腫瘍組織の70%にp53遺伝子異常(欠損あるいは変異)があることがわかっている。そこで、本研究では、膵細胞特異的に、タモキシフェンにより、2重変異(KRAS変異+p53欠損)あるいは、3重変異(KRAS変異+p53欠損+PP6欠損)を誘導させ、KRAS変異+p53欠損に依存した膵臓がん発生に対する、PP6欠損の効果を調べることとした。ここで問題になるのは、(1) Ppp6cヌルマウスは胎生致死であること。(2) 成人マウスは変異型KRAS依存的なマウス膵がん発生に耐性を示すこと。であった。そのため、上記の変異は、生後直後から、母乳を介してタモキシフェンを投与するという新しい方法を用いることにした。 この研究により、新規膵臓がん抑制遺伝子を同定することだけでなく、新しいマウス膵臓がんモデルを作製することができれば、それによって新しい治療法のスクリーニングに活用することができると考えている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
① 遺伝子変異マウスの作製: Pdx1-CreERT2:KrasLSL-G12D/+:p53F/F マウスの作製に成功した。これはタモキシフェン(TAM)によって、膵臓特異的に2重変異(KRAS(G12D)発現+p53欠損)を誘導可能なマウスである。次に、そのマウスを基に膵臓特異的に3重変異(KRAS(G12D)発現+p53欠損+Ppp6c欠損)を誘導可能なマウスの作製に成功した。 ② 変異誘導システムの検証:生後、Day0からDay6まで、毎日母親に、TAMを腹腔内に注射し、乳汁を通じて活性化TAMを乳児に与えた。その後で、各種遺伝子型をもつマウスの膵臓からゲノムを抽出して、遺伝子組換えの有無を調べた。その結果、KRAS、p53、そしてPP6遺伝子のローカスに、膵細胞特異的に、計画通りの組み替えが起きていることを確認できた。 ③ 腫瘍発生の検証:膵臓特異的に3重変異(KRAS(G12D)発現+p53欠損+Ppp6c欠損)を起こしたマウスは、2重変異(KRAS(G12D)発現+p53欠損)を起こしたマウスに比較して、明らかに腫瘍発生の時期が早くなり、かつ癌死を起こしていることが明らかとなった。
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Strategy for Future Research Activity |
① 組織におけるシグナルの解析:TAM投与後のKRASG12D/+:p53Δ/Δ:Ppp6cΔ/Δ膵組織mRNAとそのコントロール(Ppp6c+/+)組織から、mRNAを単離して、トランスクリプトーム解析を行い、Ppp6c欠損によっておこる腫瘍化に関わるシグナル経路の同定を試みる。 ② 組織におけるメタボロームの解析:①で解析したのと同じ組織における代謝産物を解析し、その腫瘍における異常な代謝経路を同定する。
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Causes of Carryover |
消耗品費が当初想定よりも少なくすんだため、次年度の消耗品費に上積みし、より迅速な計画進捗をねらう。
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Research Products
(2 results)
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[Journal Article] Ppp6c haploinsufficiency accelerates UV-induced BRAF(V600E)-initiated melanomagenesis.2021
Author(s)
Kanazawa K, Kishimoto K, Nomura M, Kurosawa K, Kato H, Inoue Y, Miura K, Fukui K, Yamashita Y, Sato I, Tsuji H, Watanabe T, Tanaka T, Yasuda J, Tanuma N, Shima H
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Journal Title
Cancer Sci.
Volume: 112(6)
Pages: 2233-2244
DOI
Peer Reviewed / Open Access
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[Journal Article] Ppp6c deficiency accelerates K-ras(G12D)-induced tongue carcinogenesis.2021
Author(s)
Kishimoto K, Kanazawa K, Nomura M, Tanaka T, Shigemoto-Kuroda T, Fukui K, Miura K, Kurosawa K, Kawai M, Kato H, Terasaki K, Sakamoto Y, Yamashita Y, Sato I, Tanuma N, Tamai K, Kitabayashi I, Matsuura K, Watanabe T, Yasuda J, Tsuji H, Shima H
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Journal Title
Cancer Med.
Volume: 10(13)
Pages: 4451-4464
DOI
Peer Reviewed / Open Access