2021 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
21K15435
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
松尾 祐一 熊本大学, 大学院生命科学研究部(保), 助教 (60802824)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 細菌学 / エネルギー代謝 / ピリミジン合成 |
Outline of Annual Research Achievements |
結核菌はヒトの肺に感染し、肉芽腫を形成する。肉芽腫は結核菌を取り囲むマクロファージとT細胞の集積体で、その内部は低酸素環境である。そして、結核菌はエネルギー代謝系を再構成することで、低酸素環境下への適応を可能とする。本研究の対象とする、ジヒドロオロト酸脱水素酵素 (DHODH) は、酸化型キノンとジヒドロオロト酸を基質とし、還元型キノンとオロト酸への反応を触媒することから、ATP合成における電子伝達と、核酸代謝におけるピリミジン生合成に役割を果たす。本年度は、Mycobacterium smegmatis (M.smegmatis) において、CRISPR干渉による遺伝子ノックダウンを用いて、DHODHの細胞分裂に与える影響を評価した。その結果、DHODHをノックダウンすることにより、M. smegmatis の増殖が止まることが分かった。そして、DHODHをノックダウン後のM. smegmatisの細胞生存アッセイを行ったところ、細胞は生存していることが分かった。また、ピリミジンの前駆体であるウリジンを培地に添加することで、細胞増殖が回復した。つまり、DHODHの発現量を抑制することで、細胞増殖を抑えることはできるが、細胞が死ぬことはないことが示唆された。さらに、M. smegmatis は細胞外部のウリジンを利用することで、ピリミジン生合成系の破綻を補うことができると示唆された。 また、DHODHの結晶構造を明らかにするために、大腸菌を用いた組換えDHODHの発現系の改善を行った。組換えDHODHは大腸菌内では、封入体を作ることから、可溶性タグであるGSTをもつDHODHの発現を検討した。その結果、GSTタグをもつDHODHは活性を保持した状態で膜画分に局在することが分かった。今後は、精製条件の検討を行い、純度の高い精製標品を得ることを目標に研究を進める。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初予定していた、組換えDHODHタンパク質の発現、精製と、遺伝子ノックダウンによる表現型の解析を進めた。DHODHは生存に必須であることから、創薬における標的分子の有望な候補と考えられていたが、期待する結果を得ることができなかった。今後は、当初から予定している組換えDHODHの結晶構造解析を進めていくと同時に、他の代謝系の酵素についても検討を進めていく。
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Strategy for Future Research Activity |
創薬における標的分子としての可能性を評価するために、ピリミジン生合成系遺伝子のノックダウン実験を行った。その結果、ピリミジン生合成系を標的とした場合には、静菌的に作用することが明らかとなった。つまり、創薬においては有望な標的ではないことが示唆される。したがって、今後の研究では、組換えDHODHの結晶構造解析を進めていくと同時に、他の代謝系についても着目して研究を進めていく。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルス感染症の影響により、年度末までに入手が困難なプラスチック製品、または実験試薬があり、次年度使用額が生じた。本予算については、計画通りに消耗品に使用する。
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Research Products
(1 results)
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[Presentation] Expression of trypanosomal acetate: succinate CoA transferase is sufficient to develop resistance to the ATP synthase inhibitor bedaquiline in Mycobacterium smegmatis2021
Author(s)
Bundutidi M. G., Ando Y., Matsuo Y., Nakatani Y., Kiel H., Cook G. M., Sakura T., Hamano S., Hirayama K., Kita K., Inaoka D. K.
Organizer
日本生体エネルギー研究会第47回討論会