2021 Fiscal Year Research-status Report
Analysis of dynamic epigenetic changes caused by HTLV-1 infection.
Project/Area Number |
21K15454
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
松尾 美沙希 熊本大学, ヒトレトロウイルス学共同研究センター, 特定事業研究員 (20884604)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | HTLV-1 / 成人T細胞白血病 / プロウイルス / 転写制御領域 / エンハンサー / エピゲノム動態 |
Outline of Annual Research Achievements |
成人T細胞白血病(ATL)においてウイルスの組み込み部位周辺に異常な遺伝子転写が観察されることが知られている。本研究において、次世代シークエンサーを用いたクロマチン免疫沈降法 (ChIP-seq)や遺伝子発現解析(RNA-seq)を用いてHTLV-1内の転写制御領域が宿主ゲノムにどのようなメカニズムで影響を及ぼすかについて検討を行った。 ・HTLV-1の新規転写制御領域の同定:ATL細胞株であるED細胞とHTLV-1感染の非ATL細胞株であるTBX-4B細胞、および無症候性キャリア検体1例とATL患者検体2例を用いてMNase-seqを行い、これまでに未特定であった1つのオープンクロマチン領域を同定し、その転写制御活性を調べたところ、同領域がエンハンサー活性を持つことが判明した。 ・新規エンハンサー領域の分子メカニズム解析:今回同定されたエンハンサー領域内に結合する転写因子を同定するために、in silico解析で転写因子結合予測を行い、予測された転写因子についてChIP-seqを行った。その結果、遺伝子転写を活性化する転写因子であるSRFとELK-1がエンハンサー領域に局在していることが明らかとなった。 ・エンハンサー変異配列を含むHTLV-1分子クローンを用いた遺伝子発現解析:ATLにおいて組み込み部位周辺の宿主ゲノムに異常な遺伝子転写が存在するが、この現象に今回同定したエンハンサー領域が関与するか調べるために、野生型およびエンハンサー変異型HTLV-1感染細胞を新たに樹立し、RNA-seqを行った。その結果、野生型においてはHTLV-1組み込み部位周辺に遺伝子発現の活性化が見られる一方でエンハンサー変異型においてはその変化が見られないことがわかった。このことから同エンハンサー領域はウイルス遺伝子発現に対してだけでなく、宿主ゲノムの遺伝子発現にも影響を及ぼすことが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度はHTLV-1ゲノム内にこれまで未特定であった新規エンハンサー領域を同定し、その分子メカニズムとして転写因子SRFとELK-1の局在について明らかとした。またエンハンサー変異型HTLV-1分子クローン感染細胞を樹立し、遺伝子発現解析を行うことで同エンハンサー領域がウイルス遺伝子発現に対してだけでなく、宿主ゲノムの遺伝子発現にも影響を及ぼすことを見出した。これらの結果を踏まえ、次年度はATL患者検体を用いたウイルス組み込み部位周辺の単一細胞レベル遺伝子発現解析に円滑に進むことができると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
各病型のATLおよびHTLV-1キャリアの臨床検体におけるプロウイルス組み込み部位周辺のクロマチン構造変化や転写動態などについてシングルセルレベルで解析を行う。クロマチン構造についてはシングルセルATAC-seq、転写動態についてはシングルセルRNA-seqを用いて発現解析を行う予定である。 これらを用いてHTLV-1感染および非感染におけるCD4 T細胞内の転写・クロマチン動態を同一患者検体内で比較することで、HTLV-1の組み込みが及ぼす宿主のエピゲノム動態について高精細に解析ができると考えられる。 これにより、HTLV-1プロウイルスによって引き起こされる宿主ゲノムのエピゲノム動態異常とATL発症メカニズムとの関連を明らかにする。
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Research Products
(2 results)
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[Presentation] Identification and Molecular Characterization of a New HTLV-1 Enhancer2021
Author(s)
Misaki Matsuo, Takaharu Ueno, Kazuaki Monde, Benjy Jek Yang Tan, Kenji Sugata, Paola Miyazato, Kyosuke Uchiyama, Saiful Islam, Hiroo Katsuya, Shinsuke Nakajima, Masahito Tokunaga, Kisato Nosaka, Hiroyuki Hata, Atae Utsunomiya, Jun-ichi Fujisawa, Yorifumi Satou
Organizer
第35回日本エイズ学会学術集会・総会 France-Japan Joint Symposium
Int'l Joint Research / Invited
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