2021 Fiscal Year Research-status Report
肺ウイルス感染による宿主免疫応答に対するPI3キナーゼδ阻害剤の効果の解明
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21K15471
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
神尾 敬子 九州大学, 大学病院, 医員 (50813771)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | PI3キナーゼdelta / ヒトメタニューモウイルス / インターフェロン / 共刺激分子 |
Outline of Annual Research Achievements |
共抑制分子PD-L1はウイルス由来二本鎖RNAの認識により感染細胞上に発現が誘導され、ウイルス特異的細胞障害性T細胞の活性化を抑制することで感染の遷延化に関わることが知られている。一方で、同様に二本鎖RNAにより発現が誘導されるPD-L2の感染時の獲得免疫に対する働きは十分に解明されていないが、PD-L2はCD4陽性T細胞を活性化させ、PD-L1/PD-1結合を抑制することで病原体の排除を促進するとの報告がなされている。 患者より採取した気道上皮細胞 (PBEC)を抗ウイルスIFNであるtype I IFNで刺激をおこなうと、共刺激分子PD-L1およびPD-L2の発現はともに増強した。またPBECを合成二本鎖RNAのpoly I:Cで刺激するとPD-L1、PD-L2共に発現が上昇するが、PI3Kδ阻害剤はpoly I:CによるPD-L1の発現増強を抑制し、一方でPD-L2の発現をさらに増強することを示した。この効果は喘息やCOPD患者より採取したPBECや、ヒトメタニューモウイルス感染時にも確認された。さらにそのメカニズムとして、PI3Kδ阻害剤はPD-L1の発現上昇をAkt-mTOR経路を介した転写後調節により抑制するのに対し、PD-L2はPI3Kδ阻害剤により産生が増加したIFNを介して発現がさらに増強されることを明らかにした。すなわち、気道ウイルス感染時にはPI3Kδを介した自然免疫と獲得免疫のクロストークがあり、PI3Kδ阻害剤は自然免疫・獲得免疫両面からウイルスの排除に対し促進的に作用する可能性があることを示した。 本成果は論文発表をおこなった。(Ogawa T et al. Front Immunol. 2021 Nov 25;12:767666.)
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
順調に進展し、論文発表が可能であった。
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Strategy for Future Research Activity |
PCLS (precision-cut lung slices)という近年確立されたex vivo培養法を用いて、マウス肺へ感染したウイルスが誘導する免疫応答およびウイルス増殖能に対するPI3Kδ阻害剤の効果を明らかにする予定としている。
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Causes of Carryover |
関連する研究内容で研究助成金を獲得したため、当財源からの物品購入費支出が減額となった。またコロナ禍により学会がハイブリッド開催となったため、旅費が不要となった。 翌年度はマウスを用いた実験となるためマウス維持管理費等必要となり、次年度使用額およち翌年度請求助成金ともに本研究に使用する予定である。
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