2022 Fiscal Year Annual Research Report
薬剤性アナフィラキシー克服を目指したマスト細胞の脱顆粒制御機構の解明
Project/Area Number |
21K15472
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
國村 和史 九州大学, 生体防御医学研究所, 助教 (20844830)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 薬剤性アナフィラキシー / マスト細胞(肥満細胞) / DOCKファミリー分子 / 脱顆粒 / Mas関連Gタンパク質共役型受容体 |
Outline of Annual Research Achievements |
アレルギー病態に関わるマスト細胞が秒~分単位で迅速に脱顆粒を引き起こすためには、細胞骨格系の再編成を伴う精緻なメカニズムが存在すると想定された。研究代表者の所属研究室では、DOCK2(Dedicator of cytokinesis 2)が低分子量Gタンパク質であるRac1/2の活性化を介して、好中球やリンパ球などの細胞骨格を制御することを見出してきた。一方、マスト細胞の脱顆粒現象にDOCK2が関与するのかどうか、関わるとしたらどのような役割を担っているかは不明なままであった。そこで研究代表者は、DOCK2を遺伝的に欠損したマウス、およびそのマウスから単離・培養したマスト細胞、ヒト末梢血造血幹細胞由来のマスト細胞を用いることで、薬剤で刺激した際のアナフィラキシー/脱顆粒誘導機構を検証した。 研究実施計画に沿い、結合組織型マスト細胞およびマウス個体を用いて種々の機能解析を行ったところ、薬剤誘導性の脱顆粒反応やアナフィラキシー症状がDOCK2欠損下で著しく減弱することを見出した。マスト細胞のCa2+流入や幾つかのシグナル伝達分子のリン酸化はDOCK2を欠損しても影響が見られない一方、Rac活性化およびPAK1のリン酸化が障害されていた。さらに、野生型マウスや健常人由来のマスト細胞をDOCK2阻害剤およびPAK1阻害剤で処理すると、薬剤による脱顆粒が濃度依存的に抑制できることを見出した。 以上より、薬剤性アナフィラキシーに関わるマスト細胞の脱顆粒にDOCK2-Rac-PAK1経路が重要な役割を演じていることが分かった。最近、マスト細胞のMRGPRX2受容体を介した反応は慢性蕁麻疹や接触性皮膚炎などとの関連も指摘されていることから、薬剤性アナフィラキシーのみならず様々なアレルギー疾患を制御する上で有用な創薬ターゲットになり得る。
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