2021 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
21K15474
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Research Institution | Kansai Medical University |
Principal Investigator |
住吉 麻実 関西医科大学, 医学部, 助教 (50779402)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | T細胞 / 小胞輸送 / アポトーシス / Arf / ADP ribosylation factor |
Outline of Annual Research Achievements |
研究代表者は、Arf1・Arf6二重欠損T細胞(以下、Arf-KO T細胞)はTCR刺激に伴ってアポトーシスが誘導されること、またその背景にはBimの発現亢進やMcl-1の発現低下といったアポトーシス関連因子の発現バランス異常があることを見出している。そこで、本年度はArf経路を介した生存維持機構についての解析を行った。その結果、mRNAレベルではBimやMcl-1の発現に異常がないことが明らかとなった。また、T細胞の生存におけるArf1とArf6の機能重複機構について明らかにするため、免疫染色によるArf1とArf6の細胞内局在解析を試みたが、市販されているArf1特異的抗体が実際は他のArfアイソフォームにも反応してしまい、Arf1特異的な抗体として使用するのは好ましくないことが判明した。そこで、EGFPを付加したArf1ならびにDsRedを付加したArf6を安定に発現するJurkat細胞株を樹立し、両者の局在解析を行なった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
Arf-KO T細胞におけるTCR刺激誘導性アポトーシス亢進の分子基盤解明を目指し、研究計画に沿って、TCR刺激を行ったコントロール細胞とArf-KO T細胞におけるBimとMcl-1の発現レベルをリアルタイムPCRで調べたが、mRNAのレベルでは発現の差がみられなかった。Bcl-2ファミリーであるBimやMcl-1の機能発現は、mRNAの転写調節、タンパク質の分解制御、ならびに細胞内局在の3つの段階で制御されることが知られており、タンパク質分解や細胞内局在といった翻訳後修飾の異常がArf-KO T細胞におけるBcl-2ファミリーの発現バランスを崩す原因であることが示唆される。また、Arf1とArf6の局在解析については予定していた市販の抗体を使用した免疫染色法は不適切であると判断し、当初の計画を変更し、EGFPを結合したArf1とDsRedを結合したArf6の両者を発現するJurkat細胞株の樹立を行なった。蛍光タグの付加によってArf1・Arf6が凝集するといった異常が誘導されていないかをレーザー共焦点顕微鏡にて確認した結果、HeLa細胞を用いた従来の研究報告と同様に、Arf6は概ね細胞膜に局在し、一部が細胞質に局在していた。また、Arf1は主にゴルジ体とその周辺に局在することが知られているが、樹立したJurkat細胞においてArf1は細胞質にリング状に分布していた。COS-1細胞を始めとする一部の細胞株ではゴルジ体がリング状の構造をとることが知られており、Jurkat細胞におけるArf1のリング状の分布はゴルジ体への局在を示すものと考えられる。現在、種々のオルガネラマーカーを用いてArf分子の局在解析を進めると共に、両者が共局在している可能性を検証中である。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度に得られた結果をもとに、主としてタンパク質の分解制御の視点から、Arf-KO T細胞におけるTCR刺激誘導性アポトーシス亢進の分子基盤解明を目指す。具体的には、PI3K-Akt経路やMAPK経路に焦点を当て、これらシグナル伝達経路の異常の有無を検証する。また、がん細胞株ではArf経路とERストレス応答の関与が示唆されており、持続したERストレスはBimの発現を誘導することが知られている。そこで、並行して、Arf欠損T細胞においてERストレスが亢進しているか否かをUPR関連分子の発現解析を通じて調べる。Arf1とArf6の機能重複機構については、樹立したJurkat細胞株を用い、刺激の有無によるArf1とArf6の細胞内局在変化を調べるとことで、Arf1・Arf6の共局在の有無や各種オルガネラとの相互作用を明らかにする。並行して、免疫沈降法によりArf1とArf6が共沈するのか、また共沈したタンパク質にArf1とArf6で共通のターゲットが存在するのか検証を試みる。
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