2021 Fiscal Year Research-status Report
NSAIDsによるABCC3とROSを介した家族性大腸腺腫症の発癌抑制機構の解明
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21K15477
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
小林 実 東北大学, 大学病院, 助教 (40885547)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | ABCC3 / Wntシグナル / 活性酸素種 / 家族性大腸腺腫症 / ROS / FAP |
Outline of Annual Research Achievements |
令和3年度は、ABCC3の発現亢進がROSの細胞内濃度の変化させるかどうかを確かめるために、まずレンチウイルスベクターを用いて大腸癌細胞株3種類 (SW620, HCT116, HT-29) にABCC3を過剰発現させた。それらにおいてROS検出キットを使用することにより、ABCC3の発現変化に伴うROSの細胞内濃度の変化を評価した。ABCC3過剰発現株とEmpty vectorのみ導入した細胞株でROSの細胞内濃度を評価した結果、SW620においては過剰発現株においてROSの有意な細胞内濃度の低下が確認された。一方で、HCT116、HT-29においては有意差が確認されなかった。ウェスタンブロットでABCC3の過剰発現を蛋白レベルで確認したところ、SW620、HT-29でのABCC3過剰発現は確認できたが、HCT116では確認できなかった。ROS検出キットを用いた実験結果が細胞株によって異なったことに関しては、HCT116ではABCC3の過剰発現がなされていなかったことが原因と考えられた。HT-29においては過剰発現していない通常状態でもABCC3の発現量が多いことが先行研究で分かっており、通常状態で十分にABCC3を発現しているため、過剰発現による差が確認できなかったと考えられた。また、今回用いたキットに含まれるROSを検出する化合物(DCF; dichlorodihydrofluorescin)に類似する物質(CDF; 5-carboxy-2’,7’-dichlorofluorescein)が、ABCC3の基質であることを示す論文を認めた。別の試薬を用いて再度SW620で同様の実験を行ったところ有意差を再現することは出来なかった。そのため、前述のSW620の有意な結果は、ABCC3によってROSを検出する試薬が細胞外に排出されていた可能性が高いと考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
FAPの手術症例が少ないため、FAP患者由来のオルガノイドを用いて行う予定である実験計画(B)『ABCC3発現変化によるROS濃度とMAPKシグナルへの影響の解明』の開始が当初予定していた計画より遅れている。またROS検出の為に用いたROS assay kitに用いられているROSを検出する試薬であるDCFがABCC3の基質であることが強く疑われる結果が出たため、実験結果の解釈や他のkitを用いた検証実験などを行う必要があり、研究計画を変更する必要が生じた。
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Strategy for Future Research Activity |
2種のABCC3過剰発現細胞株 (SW620, HCT-15) と1種のABCC3ノックアウト細胞株 (HT-29)、ならびにそれらの親株における遺伝子発現量を、 RNA-sequencingを用いて網羅的に解析することで、ABCC3の発現変化に伴って、大きく発現変化する発現変動遺伝子 (differential expressed genes: DEGs) をBioinformaticsを用いた手法で解析する。その中で、ROS代謝に関連する遺伝子の発現変化ならびに癌化に関わるPathwayの変化などについて検証する予定である。
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Causes of Carryover |
令和3年度の実験では、生化学的な実験の多くは研究室に既存の試薬・器具を使用して行ったため、次年度使用額が生じた。令和4年度は各種新規実験系を施行予定であるため、翌年度分として請求した助成金と合わせて試薬・器具を揃えた上で研究を行っていく予定である。
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