2022 Fiscal Year Research-status Report
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21K15490
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Research Institution | National Institutes for Quantum Science and Technology |
Principal Investigator |
伊藤 紘 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構, 量子生命科学研究所, 主任研究員 (80793934)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | X線 / 放射線抵抗性がん / 活性酸素種 / 光線力学療法 / ポルフィリン |
Outline of Annual Research Achievements |
がん治療の有効な手段の一つとして放射線が用いられているが、治療過程において放射線抵抗性を獲得するものが存在しており、予後不良因子となり得る。従って、放射線治療過程において放射線に対する抵抗性を獲得したがん細胞への治療法の開発が望まれる。 光線力学療法(Photodynamic therapy: PDT)は、がん細胞に集積しやすい特徴を有する光増感剤を投与し、集積した光増感剤に低出力レーザーを照射することで発生する活性酸素種を利用してがん細胞を死滅させる治療法である。PDT用光増感剤としてポルフィリン化合物が従来使用されてきており、ポルフィリンはヘム輸送タンパクであるHCP1によって細胞内へと取り込まれる。我々はこれまでに、HCP1の発現ががん細胞において過剰に産生される活性酸素種によって誘導されることを提唱してきた。一方で、細胞への放射線照射は細胞内活性酸素種の産生増大を誘発することが知られている。従って、放射線照射によって放射線耐性を獲得したがん細胞は活性酸素の産生が増強していることが予想され、それに伴うPDTの効果増大も期待される。本研究では放射線抵抗性のがん細胞を樹立し、PDTによる治療効果を検討する。 2022年度は放射線抵抗性細胞におけるポルフィリン取り込み関連タンパクの発現比較およびレーザー照射によるがん細胞治療効果について検討した。ポルフィリン取り込みタンパクHCP1はX線抵抗性細胞で発現亢進が見られ、PDTによる細胞殺傷効果も対照細胞群に比べて増強していた。このことから、放射線抵抗性を獲得した培養がん細胞に対してPDTが効果的に作用することが示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
樹立したX線抵抗性がん細胞でのポルフィリン関連タンパク発現の増大およびPDT効果の増強が確認されたことから、おおむね順調に進展していると思われる。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでに得られた結果をもとに論文の執筆を行うとともに、必要に応じて追加データの収集を行う。また、新型コロナウイルス感染症の収束傾向が予見されることから、状況に応じて国際学会も含めた学会での発表や関連分野の情報収集を行っていく予定である。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルス感染症の影響および研究環境の変化から消耗品費、旅費の余剰金が発生した。社会状況を注視しながら出張を行っていくとともに、消耗品の購入や論文掲載のための費用として使用していく予定である。
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