2021 Fiscal Year Research-status Report
PGE2受容体EP4の口腔癌における遊走性亢進作用のメカニズム解析
Project/Area Number |
21K15492
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Research Institution | Yokohama City University |
Principal Investigator |
中鍛治 里奈 横浜市立大学, 医学部, 助教 (80845511)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 口腔癌 / EP4 / PGE2受容体 / ミトコンドリア |
Outline of Annual Research Achievements |
我々はEP4と呼ばれるプロスタグランディンE2 (PGE2)の受容体に着目した.EP4は肺癌や腎癌で,PGE2の細胞遊走や転移調節において機能すると報告されている.我々は口腔癌でも同様にEP4が細胞遊走や転移に関与し、細胞外カルシウムが細胞内へ流入することをEP4の作用によって誘導することで,癌細胞の遊走性を促進させることを明らかにした.先行研究から,EP4による細胞内へのカルシウム流入によって,癌細胞のエネルギー制御を行うタンパクの発現に変化がみられた.このことから,EP4の作用機序として代謝機構への影響が関与していると考えた.本研究では,EP4の癌細胞への作用のメカニズムについて代謝機構を詳細に検討することで癌治療への手がかりを検索していく.最終的には癌細胞特有の代謝機構の制御が癌進行に重要であることを証明し,代謝機構の制御に重要な細胞内カルシウム濃度や,EP4を制御することが癌の制御に有効であるか確認する. 当該年度はEP4による癌の代謝機構への影響について検討した.EP4による癌の代謝機構への影響の有無を確認するために,EP4アゴニストで刺激した際の口腔癌細胞の細胞内で代謝を司るミトコンドリア機能への影響の有無を確認した. 口腔癌細胞株へEP4アゴニストを添加すると,ミトコンドリアから産生されるATP量が増加したのに対し,解糖系によって産生されたATP量は減少していた.トータルのATP産生量には有意な差は見られなかった.この結果は,EP4の刺激によって細胞の恒常性は保たれるものの,その内部ではミトコンドリアの活性亢進がみられていることを示唆した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当該年度に実施予定であった実験は半分ほど実行できている.RNAシークエンスの実施を予定していたが,まずはEP4による癌細胞代謝への影響の検索を優先し実験を実施している.予定通りではないが,癌細胞の代謝を詳細に検索するためにフラックスアナライザーと呼ばれる機器を用いて検討を進めている.EP4刺激時の細胞外酸性化速度や酸素消費速度を調べることによって代謝機構を明らかにすることができる.引き続き検索を進めていく.
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き癌細胞の代謝を詳細に検索するために,フラックスアナライザーを用いて検討を進める.EP4刺激時の細胞外酸性化速度や酸素消費速度を調べることによって代謝機構を明らかにし,ミトコンドリア活性亢進の有無を確認する.また、口腔正常細胞を入手したため,EP4の口腔正常細胞内の発現を確認し,EP4の働きが癌細胞特有のものであるか確認する.口腔癌細胞においてEP4刺激時特異的にミトコンドリアの機能が亢進することが示されれば,細胞内のエネルギー制御を行うタンパクの機能が癌細胞の遊走に重要である可能性がある.癌細胞におけるエネルギー制御の重要性及び遊走とのかかわりについて探索を進めていく.
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Causes of Carryover |
引き続きin vitroの検討を進めていくため,癌細胞培養に必要な器具や材料を次年度購入する予定である.また,フラックスアナライザー実施のための専用の試薬や器具が高額であるため,必要物品を購入するものとする.
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