2021 Fiscal Year Research-status Report
胆管癌における、in vivo増殖能を指標とした新規癌幹細胞関連遺伝子の同定
Project/Area Number |
21K15495
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Research Institution | Miyagi Prefectural Hospital Organization Miyagi Cancer Center |
Principal Investigator |
藤盛 春奈 地方独立行政法人宮城県立病院機構宮城県立がんセンター(研究所), がん幹細胞研究部, 研究員 (80882935)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | がん幹細胞 / 腫瘍不均一性 / 分子間相互作用 |
Outline of Annual Research Achievements |
ヘテロな細胞集団である癌組織には、腫瘍構築能や治療抵抗性を示す「癌幹細胞」の亜集団が存在する。抗癌幹細胞治療が望まれるが実用例は少なく、癌幹細胞が維持される機構も不明である。そこで申請者らは、有効な化学療法も少なく、難治性癌である胆管癌を対象に、新規癌幹細胞関連遺伝子を探索した。これにより、癌幹細胞形質の維持機構を明らかにし、胆管癌の新規治療標的の開発を目指した。 申請者らは、免疫不全マウス皮下での造腫瘍能が高い胆管癌PDX、すなわち癌幹細胞が濃縮された胆管癌PDXを作製し、それらに高発現する遺伝子を解析した。その結果、造腫瘍能を制御する遺伝子Xを見出した。 遺伝子Xが制御する経路を明らかにするため、まずは相互作用するタンパク質の同定を試みた。FLAGタグを融合させた遺伝子Xを胆管癌細胞株に過剰発現させ、FLAG抗体で共沈降した分子をMS解析した。 その結果、いくつかの転写因子、癌との関連が報告されているシグナル分子が同定された。申請者らは中でも、癌との関連が報告された遺伝子Yに着目した。遺伝子Yはチロシンがリン酸化されることで活性化することが知られている。そこで胆管癌細胞株において遺伝子Xをノックダウンすると、遺伝子Yのリン酸化が減弱することがわかった。このことから、遺伝子Xと遺伝子Yは、機能的に相互作用していることが示唆された。現在は、物理的な相互作用についてさらに解析を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本課題で新たに同定した遺伝子Xは、先行研究が少なく、幹細胞性をどのように制御するか分子機構は明らかにされていない。 申請者らは、遺伝子Xと相互作用する遺伝子Yを同定し、機能的に相互作用することを見出した。今後は遺伝子X/遺伝子Yの複合体モデルを想定し、胆管癌における遺伝子Xによる幹細胞性制御機構について、引き続き解析を行う。さらに、本課題で明らかになった分子機構が、治療標的と成り得るか、新規治療薬のスクリーニングなどを行う計画である。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、まず遺伝子Xと遺伝子Yの物理的相互作用の解析を進める。共免疫沈降で物理的相互作用を確認できたら、結合ドメインの同定も行う。 また、遺伝子Yはリン酸化されて活性化することが知られている。遺伝子Yをリン酸化しうるキナーゼとして、癌原遺伝子であるSRCなどが報告されている。そこで、がん形質との関わりが報告されている非受容体型キナーゼに着目し、機能的な相互作用の解析を進める。 これらの分子によって胆管癌細胞株の表現型がどのように変化するか調べ、さらに治療標的と成り得るか新規治療薬候補のスクリーニングなどを行う。
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Causes of Carryover |
造腫瘍能の評価はマウスを用いたin vivoでの解析であり、時間を要する。今年度はこのようなマウスモデルの検討が多く、消耗品の使用量が抑えられ、予定よりも使用額が抑えられた。
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