2022 Fiscal Year Research-status Report
Interleukin(IL)-38を標的とした肺癌の新規免疫療法の開発
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21K15507
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Research Institution | National Hospital Organization, Kyushu Cancer Center |
Principal Investigator |
木下 郁彦 独立行政法人国立病院機構(九州がんセンター臨床研究センター), その他部局等, 呼吸器腫瘍科医師 (20875794)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 肺癌 / 腫瘍微小環境 / 免疫療法 / Interleukin-38 / 腫瘍関連好中球 / 腫瘍随伴マクロファージ |
Outline of Annual Research Achievements |
Interleukin(IL)-38は2001年に発見されたIL-1ファミリーに属する新規サイトカインであり、IL-36受容体に結合し、IL-36シグナル系を阻害することで、抗炎症作用を示す。肺線維症や気管支喘息、関節リウマチなどの慢性炎症性疾患、自己免疫疾患において、IL-38を標的とした治療が開発中であり、IL-38と癌の関連性についても注目を集めている。 これまでに我々は、動物実験を用いて、IL-38が腫瘍へのCD8陽性リンパ球浸潤を抑制することで、腫瘍の形成を促進することを報告した。また、肺腺癌の切除検体を用いて腫瘍細胞でのIL-38高発現が独立した予後不良因子であることや、免疫チェックポイント分子であるProgramed cell death ligand 1 (PD-L1)の発現と相関することを報告した。 一方で、IL-38の所属するIL-1ファミリーは好中球やマクロファージなどの自然免疫系の活性化に関与することが広く知られている。腫瘍関連好中球(TANs)や腫瘍随伴マクロファージ(TAMs)は抗腫瘍免疫応答を抑制し、腫瘍形成を促進することが知られている。近年、IL-38の受容体であるIL-36受容体KOマウスでは創傷治癒の際に好中球やマクロファージの浸潤が増加することが報告されており、IL-36受容体のアンタゴニストとして作用するIL-38が好中球やマクロファージの浸潤を促進している可能性が考えらえる。本研究によって、IL-38とTANsやTAMsの関連が明らかになれば、IL-38の治療応用への可能性をさらに探究できると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2021年度は臨床検体を用いた研究を主に進めた。 2003年から2012年の間に外科的切除を行い、先行研究にて腫瘍細胞のIL-38蛋白発現を評価していた肺腺癌226症例を対象に、腫瘍関連好中球(TANs)のマーカーのCD66b及び腫瘍随伴マクロファージ(TAMs)のマーカーのCD163の免疫組織化学染色を行った。腫瘍内に浸潤しているCD66b陽性細胞(TANs)及びCD163陽性細胞(TAMs)をカウントし、臨床病理学的因子及び予後、IL-38発現との関係を解析した。CD66b陽性細胞(TANs)高浸潤症例では、有意に病理病期II期以上の進行癌、胸膜浸潤陽性、高悪性度の組織亜型(Micropapillary/Solid predominant)が多く、無再発生存・全生存どちらにおいても予後不良であった。また、IL-38高発現の症例で有意にCD66b陽性細胞(TANs)高浸潤症例が多かった。CD163陽性細胞(TAMs)高浸潤症例でも、有意に有意に病理病期II期以上の進行癌、胸膜浸潤陽性、高悪性度の組織亜型(Micropapillary/Solid predominant)が多かった。無再発生存・全生存において有意差は得られなかったが、CD163陽性細胞(TAMs)高浸潤症例の予後は不良な傾向であった。また、IL-38高発現の症例で有意にCD163陽性細胞(TAMs)高浸潤症例が多かった。 2022年度は動物実験も進行させ、IL-38過剰発現肺癌細胞株をマウス皮下へ投与するモデルを用いて、IL-38過剰発現細胞株由来腫瘍にはTANs及びTAMsが多い傾向であることを確認した。
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Strategy for Future Research Activity |
臨床検体を用いた研究はさらに症例を増やして解析を追加していく方針である。 また、動物実験もさらに進めていく方針としており、先行研究にて作成したIL-38過剰発現肺癌細胞株をマウス皮下へ投与するモデルを用いて、IL-38とTANs及びTAMsの関係をさらに明らかにし、治療モデル作成のための検討を行う方針である。
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Causes of Carryover |
臨床検体を用いた研究はさらに症例を増やして解析を追加していく方針である。 また、動物実験も進めていく方針としており、先行研究にて作成したIL-38過剰発現肺癌細胞株をマウス皮下へ投与するモデルを用いて、IL-38とTANs及びTAMsの関係をさらに明らかにしていく予定である。
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