2021 Fiscal Year Research-status Report
線維化を介した局所免疫抑制機構の解明と線維化をターゲットとした免疫賦活化の可能性
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21K15514
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Research Institution | Osaka City University |
Principal Investigator |
渋谷 雅常 大阪市立大学, 大学院医学研究科, 講師 (30712244)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 大腸癌 / 線維化 / 癌局所免疫 |
Outline of Annual Research Achievements |
癌局所における免疫担当細胞の浸潤量さらにはその分布と癌間質における線維化の関係を検証した。用いたサンプルは間質成分に線維化が目立つといわれている大腸癌腹膜播種巣である。当科で保管している60例のパラフィン切片を用いて、線維化の非細胞成分であるコラーゲンと局所免疫能を反映するTリンパ球を2重染色し、線維化の程度とリンパ球の分布について画像解析ソフトを用いて解析した。なお、コラーゲンに関してはマッソン染色を、Tリンパ球に関してはImmunoScoreにも用いられるリンパ球サブセットであるCD3,CD8をそれぞれ免疫染色した。画像解析ソフトは「Image J」を用いて、線維化の程度を定量化した。 その結果、線維化が豊富な腫瘍ほど癌局所に浸潤するTリンパ球の絶対数が減少することが判明した。また免疫担当細胞の分布を検証したところ、線維化が「密」な領域には免疫担当細胞の浸潤が少なく、逆に線維化が「疎」な領域では免疫担当細胞が豊富に存在することが明らかとなった。 以上の結果より、癌局所における線維化の程度がリンパ球の浸潤に大きく関わっていることが予想された。この結果は、線維化が物理的バリアーを形成し免疫担当細胞の浸潤を抑制したり、癌関連線維芽細胞が免疫担当細胞のリクルートを抑制するシグナルを発するというこれまでの他癌腫で報告された研究結果と矛盾しないものであった。 ここまでの結果を英文学術誌「Plos one」に投稿し2021年アクセプトされた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
上記の結果を踏まえ、線維化をターゲットとした治療を行えば免疫担当細胞の浸潤が増加して、結果的に腫瘍の増殖を抑制できることをマウスを用いた実験で証明したいと考えているが、コロナ感染拡大に伴い研究室への出入りが制限されたり、実際に研究に使用できる時間が限られてしまったことで、当初の予定よりも若干の遅れが生じている。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度はマウスを用いて薬物療法にて線維化を抑制することで免疫担当細胞の浸潤を促ししいては腫瘍の増大抑制を証明する予定である。現在は本学の動物実験に関わる研究のプロトコールを倫理委員会に提出し、その審査結果を待っていることろである。 動物実験の許可がおりれば、すぐに大腸癌マウスモデルを用いて線維化をターゲットにした治療による免疫微小環境の変化と腫瘍増大抑制効果を検証する予定である。
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Causes of Carryover |
コロナ感染拡大に伴い研究室への出入りが制限されていたことや実験に関わる時間がじゅうぶんに持てなかったこともあり、以前から大学の研究資金を用いて行っていた前段階の研究結果をまとめて発表することに時間と労力を用いた。そのため動物実験を行うことはいったん保留していた。本年度からは本格的にマウスを用いる実験を行うため、前年度の予算を今年度にまわすことを予定している。
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[Presentation] 大腸癌腹膜転移では豊富な間質の線維化によりリンパ球の腫瘍への浸潤が阻害されている2021
Author(s)
王 恩 渋谷 雅常, 永原 央, 福岡 達成, 井関 康仁, 岡崎 由季, 三木 友一朗, 吉井 真美, 田村 達郎, 豊川 貴弘, 田中 浩明, 李 栄柱, 六車 一哉, 前田 清, 平川 弘聖, 大平 雅一
Organizer
第121回日本外科学会定期学術集会