2021 Fiscal Year Research-status Report
新規抗体医薬品開発を目的とした腫瘍特異的構造認識抗体の探索と解析
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21K15523
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
淺野 禎三 東北大学, 医学系研究科, 学術研究員 (60871431)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | モノクローナル抗体 / がん特異的抗体 / 抗腫瘍効果 |
Outline of Annual Research Achievements |
ヒト上皮成長因子(HER3)は肺がん、乳がん、大腸がんといった多くのがんで過剰発現していることが知られている。また大腸がんを含むいくつかの固形がんで、HER3の過剰発現は予後不良の因子として考えられている。さらにEGFRやHER2を標的とした治療薬に対する耐性の克服にも関連していることが報告されている。そのためHER3はがん治療の標的分子として注目されている。しかしHER3はがん細胞のみならず正常細胞にも発現しているため、がん細胞特異的に認識するモノクローナル抗体の開発が望まれている。そこで本研究では、①がん特異的モノクローナル抗体を作製する手法であるCasMab法を用いてがん細胞特異的抗HER3抗体を樹立することで、有用性の高い抗体医薬の開発につながる、②樹立した抗体の機能解析を通して、糖鎖とペプチドの両方をエピトープに含む腫瘍型抗糖タンパク質抗体の実態の解明、③糖鎖不全細胞株を用い、がん細胞特異的抗HER3抗体の解析を行うこととし,研究を推進している。 具体的には、免疫およびスクリーニングに細胞を用いてモノクローナル抗体を作製する手法であるCBIS法を用いて、フローサイトメトリー解析においてHER3を特異的に認識するモノクローナル抗体を多数作製することに成功した。またこれらのモノクローナル抗体は、HER3を発現しているがん細胞に対しても特異的に結合することを示した。さらにそれらの抗体の内の1つであるH3Mab-17は、in vitroおよびin vivoにおいて、抗腫瘍活性を有することを確認した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は,3ヵ年で計画する。研究初年度である本年は、HER3を発現しているがん細胞を特異的に認識するモノクローナル抗体の作製を目標とした。がん細胞にHER3を強制発現させた細胞を免疫することによって、がん細胞に内在的に発現しているHER3に対しても反応性を示す抗HER3モノクローナル抗体を100種以上作製することに成功した。また抗HER3モノクローナル抗体の一つであるH3Mab-17を用いて、in vitroにおける抗体依存性細胞障害(ADCC)活性、補体依存性細胞障害(CDC)活性を調べた。その結果、H3Mab-17はADCCおよびCDC活性を有することがわかった。さらにマウス大腸がんゼノグラフトモデルを用いたin vivoにおける抗腫瘍効果を調べた。その結果、H3Mab-17によって腫瘍体積、ならびに腫瘍重量が抑制されることが示された。現在までにH3Mab-17の抗腫瘍活性の結果について論文および学会発表も行っている。そのため,おおむね順調な進展と自己評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究では、がん特異的抗体の作製を目標としている。そのため今後は、本研究で作製した100種以上の抗HER3モノクローナル抗体から、正常細胞に発現しているHER3には反応性を示さず、がん細胞に発現しているHER3を特異的に認識する抗体のスクリーニングを行う。さらにがん特異的認識抗体のエピトープの解析を行い、エピトープ部位における正常細胞とがん細胞との糖鎖修飾の違いを調べる予定である。
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Research Products
(2 results)