2022 Fiscal Year Research-status Report
トリプルネガティブ乳癌に対する局所エピジェネティック治療を用いた免疫療法の創出
Project/Area Number |
21K15529
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Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
大場 崇旦 信州大学, 学術研究院医学系, 助教 (90724906)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | エピジェネティック治療 / トリプルネガティブ乳癌 / 抗PD-L1治療 / 免疫療法 / 腫瘍内注入療法 / エリブリン |
Outline of Annual Research Achievements |
トリプルネガティブ乳癌 (TNBC) に対する新たな治療法として免疫チェックポイント阻害剤 (ICIs) の使用が可能になったものの、その効果は限定的で、TNBCに対するICIsの効果を増強させる治療戦略の開発が求められている。本研究では、新たな治療戦略の一つとして、エピジェネティック治療薬の腫瘍内注入による腫瘍微小環境 変化の誘導を用いた免疫療法の開発を目的とした。一方、エピジェネティック治療薬は、乳癌に対しては未だ保険未収載で、ICIsは実臨床では化学療法剤との併用で用いられている。そのため、まず、ICIsの効果を高める併用化学療法剤を同定することが、TNBCに対する効果的な治療の構築に繋がると考え、本検討では局所エピジェネティック治療開発の前段階として、腫瘍宿主の免疫機構によりよい影響を及ぼし、ICIsの効果を増強する化学療法剤を同定を目的に、微小管阻害剤であるエリブリンが免疫細胞に与える影響についての解析を行った。健常者のヒト末梢血単核細胞、マウスの脾臓細胞から得られた免疫細胞をin vitroで活性化させると同時にエリブリンを添加すると、CD8T細胞の増殖が促進され、その中でもCD45RA+ CCR7+ TCF1+のprogenitor exhausted T cell様のCD8T細胞の増殖の促進が認められた。さらにRNAシークエンスを行い 、エリブリン投与による遺伝子発現変化を網羅的に解析したところ、細胞増殖や免疫反応に関連する遺伝子パスウェイの発現上昇が認められた。さらに、TNBC細胞株との共培養試験では、エリブリンは活性化T細胞の殺細胞効果を増強させた。エリブリンがICIsとの併用薬剤として有用である可能性が示唆され、局所エピジェネティック治療も、エリブリンの併用によりその効果を高めることができる可能性があり、今後も開発を継続していく。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究実績の概要に記したように、これまでの検討の結果から、エリブリンがT細胞の増殖や分化の過程で抗腫瘍効果を高める方向に作用し、ICIsとの併用薬剤として有用である可能性が示された。エピジェネティック阻害剤の腫瘍内注入の効果の解析の前段階としての解析を終了した。今後、本課題の目的であるエピジェネティック阻害剤の腫瘍内注入の効果の解析を行う予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
(1)In vitroでのエピジェネティック治療薬のT細胞に対する作用の解析を進める。 (2)マウス担癌モデルにてエピジェネティック治療薬の腫瘍内局注と全身投与での抗腫瘍効果の違い、また末梢血のT細胞や腫瘍微小環境の変化に対する効果の違いを解析する。 (3)局所エピジェネティック治療と免疫チェックポイント阻害剤の併用療法の効果をマウス担癌モデルで検証する。
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Causes of Carryover |
次年度以降の研究費として使用する。
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